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揉め事を避けられる「遺言ビデオレター」 遺族に納得感生まれる

「遺言ビデオレター」は紙の遺言とどう違うのか(イメージ)

「遺言ビデオレター」は紙の遺言とどう違うのか(イメージ)

 新型コロナの流行は「オンライン飲み会」や「オンライン帰省」を誕生させた。会うことはできなくても、メールより音声、音声より動画を通じることで、よりいっそうの「心の通いあい」が生まれるというわけだ。その波が、デジタルとはほど遠そうな「遺言」にも押し寄せているという。

 7月10日、相続法の改正によって生まれた新制度「自筆証書遺言書保管制度」がスタートした。これにより、自分で書いた遺言書を法務局に預けることが可能になった。紛失・焼失のリスクだけでなく、捨てられたり書き換えられるリスクを避けることができるという。そんな対策が取られるくらい、遺言書を巡るトラブルは思いのほか多い。税理士でファイナンシャルプランナーの福田真弓さんは次のように言う。

「特に多いトラブルは“家族の誰かが無理やり書かせたのではないか”“親を唆して、都合のいいように遺言書を書かせたのではないか”と疑われることです。『同居するから』『介護するから』と親に条件を出し、自分への遺産を多めにしてほしいとこっそり頼んでいたのはないかと、ほかの家族が疑うことで争いが生じるケースは少なくない」

 よかれと思って遺言書を用意しても、それが残された家族のトラブルの引き金になることがあるのだ。

 そうした相続の揉め事は、年々増加傾向にある。司法統計年報によると、2018年の遺産分割調停件数は1万3040件にのぼり、10年前に比べて約2800件増加。約75%が遺産総額5000万円以下の場合で、約33%が1000万円以下の場合と「争うほど遺産がないからウチは安心」とはいえないのが現実だ。

 そこで活用されるのが遺言書の「付言」だ。遺言書に自由に付け足すことのできる文章欄のことで、感謝の言葉や遺言の動機などが記される。

「付言は遺言書の最後に書き、“どうしてそのような遺産分割をしたのか”を説明できるものです。ただし、相続分の指定などと違い法的拘束力がないので、書かない人も多い。また、せっかく書いても、公正証書遺言のようにパソコンで入力されたような場合は“誰かが書かせたのではないか”という疑念は拭いきれません」(「菰田(こもだ)総合法律事務所」代表の菰田泰隆弁護士)

 付言の量は上限がなく、なかには付言だけで何ページも記す人もいるという。ただ、どれだけ丹精込めてしたためても、本人の意思ではないとみなされて、争いの種になっては意味がない。

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