田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の単月輸出額が過去最高を記録 欧米向けに伸び続ける背景

コロナ禍で中国の輸出が伸び続ける理由とは(江蘇省連雲港。Getty Images)

 中国の輸出が好調だ。2020年1~11月の累計(ドルベース、以下同様)では2.5%増だが、11月は21.1%増で、単月の輸出額では過去最大を記録した。国・地域別トップはアメリカで、全体の17.5%を占める。第2位はEUで15.1%、第3位はASEANで14.7%、第4位は香港で10.4%、日本はラテンアメリカに次いで第6位、5.6%を占める。

 伸び率も示しておくと、1~11月の累計では、アメリカ、EUはいずれも5.7%増、ASEANは5.8%増。全体が2.5%増なので、ウエイトの高いところが大きく伸びることで全体の輸出を牽引している。なお、香港は▲4.2%減、日本は▲1.2%減で平均を大きく下回っている。

 グローバル世界、特に欧米で新型コロナ禍が猛威を振るう中で、なぜ中国の輸出が伸びるのだろうか。

 香港では6月30日、香港国家安全維持法が可決され、即日発効した。その影響で、欧米との中継貿易が減り、統計上その分が直接、欧米への輸出に上乗せされたのではないかと言った見方もあるかもしれない。しかし、6月時点で香港への輸出は大きく減っている。急激に中継貿易が縮小しているといったような話も聞かない。

 また、人民元対ドルレートが6月以降、はっきりとした下降トレンドを形成しており、価格調整よりも数量調整が遅れることによって現れる輸出増効果、いわゆるJカーブ効果が発生しているのではないかと言った見方もあるかもしれない。しかし、人民元高と言っても、トランプ政権による対中強硬策に対する対策として、それまで歴史的な人民元安方向に為替は振れていた。そこから、確かに人民元対ドルレートは安くなっているのだが、せいぜい1割程度である。Jカーブ効果が発生したとしても小さいと考えられる。

 やはり、欧米において、中国製品に対する需要が強いことが最大の要因ではないだろうか。

 輸出の増えた主な品目を挙げると、マスク、防護服などの防疫物資、呼吸器、医療機器や、家具、内装品、家電などの巣ごもり消費関連、自転車、3Dプリンター、オンラインショッピング向けのノートパソコン、タブレット、スマホなどの電子製品など。新型コロナ禍が再び猛威を振るう中、必要な物資が増えている。加えて、アメリカ、EU各国は消費刺激策を打ち出している。更に、季節要因として、クリスマスシーズンを直前に控えている。欧米の大量で、急激な需要増に柔軟に対応し、かつ、リーズナブルな価格で製品を提供できる国は、中国のほか見当たらないのが現状だ。

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