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コロナ禍で中国製マスクを輸入した男が200万円を失った顛末

4~5月頃は、マスクが品薄で価格高騰が続いていた(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4~5月頃はどこの店でもマスクの品薄状態が続き、価格が高騰していた。街の至るところで中国製マスクが販売されていたことも記憶に新しいが、輸入・販売業者は当時どれほど儲かったのだろうか。取材を進めていくと、「儲かるどころか200万円の損失を被った」という男性に話を聞くことができた。著書『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社)が話題の、社会問題に詳しいライターの奥窪優木さんがリポートする。

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 中国上海市で自営業を営むT氏(日本人)は、中国の春節前に日本に一時帰国していたところ、新型コロナの感染拡大で中国に戻る事ができなくなってしまった。そして迎えた4月上旬、コロナ時代に合った日本での新しいビジネスを模索していたT氏のもとには、中国を拠点とする複数の業者から「マスクを仕入れないか」という誘いが何件も舞い込むようになっていた。

「面識のない業者からの話は一貫して無視していたのですが、中国広東省に住む日本人の友人で、日本にも法人を持っている貿易商のU氏の話は聞いてみることにしたんです。彼曰く、『三層立体マスク(青い使い捨てマスク)を1枚40円で納品可能』とのこと。この話を、日本国内でさまざまな事業を手掛けている会社経営者のA氏に伝えると、『仕入れてみたい』と前向きだった。当時、ネット上で売られていたマスクの小売価格は1枚55円以上。赤字にはならない計算でした。また、もともとA氏はマスク輸入販売で儲けるつもりはなく、国内のマスク不足解消の一助になりたいという思いがあるとのことだったので、その価格で輸入させてもらうことになりました」(T氏、以下同)

 その後、T氏の仲介で取引は成立し、マスク5万枚の代金として、200万円をA氏が即金で支払うこととなった。A氏はU氏の日本国内法人の口座に、4月20日にその全額を振り込んだ。そしてT氏はU氏から、20万円を仲介手数料として受け取ることとなった。しかし、順調だったのはここまでだった。

「その時のU氏の話では、『振込確認後、3~5日でマスクを発送し、輸送にかかる日数を含めても10日程度で納品できる』との話でした。しかしその2日後、U氏から『マスクの出荷準備はできたが、念のため月曜日に私がマスク工場に行き、検品してから出荷する』と連絡が入りました。さらにその3日後、今度は『マスクの検品は終わったが、マスク輸出に対する規制が強化されたため、物流業者から出荷できない』と告げられたんです。

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