中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

コロナ禍で貯蓄が増えた40代男性の疑問、「出費が増えている人は変」

 正直、私個人としては、これらについては一つも納得できません。「緊急時だから……、これぐらいの出費は許されるだろう……」と出費が増えることの言い訳をしているように感じてしまうのです。

 私なんて、もう20年、ボロボロの椅子で仕事しているし、昨年11月に引っ越した直後の机なんて段ボールですよ! これでも仕事は十分できる。

 結局、お金が貯まらない人というのは、「消費が大好きな人」だと思うんです。なんだかんだいって、消費をする際にエクスキューズを作り、お金を使うことに快感を覚える。だから貯まらないのではないでしょうか。

 その人生は否定しないものの、経済環境がマイナスになった際に「生産者や飲食店を応援します!」「この状況で最大限の生産性をあげられるように準備します!」として消費を増やすよりも、まずは自身の支出を減らすことから考えるべきでは? この時期に経済環境をプラスに転換させようと考えるのは、よっぽどの金持ちだけでいいと思います。

 社会全体が低成長になっている時に孤軍奮闘をしても、もはや抗えない。この1年程のコロナ禍はそうした諦観を我々に植え付けたのではないでしょうか。そして、経済環境が厳しい中、自分自身はそこまでダメージを受けていないのであれば、利己主義的に自分自身の貯蓄を増やすことを考えればいい。

 正直、コロナ禍を経験した我々は、「自分のことすらままならないのに、他人のことなんて考えられない」という、厳し過ぎる時代を生きている、と理解しなければならないでしょう。「自助・共助・公助」と言いますが、まずは自助が第一です。各々がそう考えて行動することが、結果的に社会全体にプラスに繋がっていくと思います。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

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