真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

日米で存在感を増す個人投資家、機関投資家もなぎ倒す“群れ”の勢力

勢いが増した背景には「貧富の差」

 振り返れば、こうした個人の不満や怒りの矛先が既存勢力に向かうきっかけは、オバマ政権時代からあったように思う。オバマ政権が中国の台頭を許したことで、中国製品が米国に溢れ、米国の産業はダメージを受けた。ウォール街をはじめ一握りの富裕層が潤う一方で、貧富の差は拡大。特に製造業に従事する「ブルーワーカー」を中心に不満が膨張し、それがトランプ氏を大統領にまで押し上げる原動力につながったのではないか。

 トランプ政権で存在感を増した“名もなき不特定多数”の勢力は、時を経てバイデン政権に交代しても、衰えを見せなかった。今年1月6日には米連邦議会議事堂にトランプ支持者が乱入し、1月下旬には株式市場で「個人投資家の乱」が勃発するなど、強大なエネルギーはそう簡単に収まりそうにない。ひとたび盛り上がった「ハーディング現象」は、その根本にある不満が解消されるまで続くに違いない。おそらくコロナが収束して経済が正常化に向かい、失われた雇用が回復してこない限り、大勢の米国民の不満も解消されないだろう。

 日本も同様かもしれない。日本でも昨年、10万円の特別定額給付金や持続化給付金などを元手に投資を始める「給付金トレーダー」が急増した。コロナ禍で失業者が増える一方で、日経平均株価が昨年3月の1万6000円台から3万円台まで駆け上がる状況を見せつけられれば、「もはや働くだけではお金は増えない。投資をしないと生き残れない」といった機運が高まり、投資を始める個人がさらに増える可能性は高い。

 2度目の緊急事態宣言が延長され、コロナ収束の見通しがなかなか立たない以上、当面は不特定多数の個人の不満も解消には向かわない。だとすれば、個人がもたらすエネルギーが株式市場に流れ込み、息の長い株高になることも予想される。個人投資家の動向は今後も市場に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。法政大学大学院教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。

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