田代尚機のチャイナ・リサーチ

株価乱高下の最大の要因、「アメリカ長期金利の上昇」は続くのか

FRBのパウエル議長は、アメリカ経済への支援継続を改めて示唆している(Getty Images)

FRBのパウエル議長は、アメリカ経済への支援継続を改めて示唆している(Getty Images)

 各国の株価指数が乱高下しているが、その最大の要因はアメリカ長期金利の変動だ。米国債(10年)を例にとると2月24日の利回りは1.3%台であったが、25日には1.5%台まで上昇した。しかし、その後は落ち着きを取り戻し、3月1日には1.4%台で推移している。少し長いトレンドでみると、昨年8月をボトムに反転、2月後半に入り急騰し、足元では少し落ち着くといった動きである。果たしてこの先、再び急騰する可能性はあるのだろうか。

 長期金利の上昇要因を整理してみると、インフレ懸念の高まりが挙げられる。景気見通しが改善している。景気悪化の元凶は新型コロナ禍であるが、それが鎮静化しつつある。

 各種報道によると、アメリカの感染者数は2月28日現在、5万1204人まで減っている。ピークは1月2日に記録した29万9786人なのでこの間、感染者数は83%も減っている。

 感染者数の減少と共にロックダウン政策を見直す地域が増えている。厳しい国境管理は続いているものの、教育機関の閉鎖については既に全国的に解除されており、職場での休業・時短要請、在宅要請などについてはほとんどの地域で行われなくなってきた。ワクチン接種が加速しつつある現在、市場関係者にとって新型コロナ禍は既に過去の出来事となりつつある。

 一方、バイデン大統領が推し進める1兆9000億ドルに及ぶ財政政策(新型コロナ対策)案は政権、民主党による強力な攻勢によって実現の可能性が高まっている。

 新型コロナ流行のフェードアウトは、景気に極めて大きな悪影響を与えた数々の対応策の解除に繋がり、開放感の高まりといった消費者心理の好転によって、消費は自律的に急回復する可能性があるが、そのタイミングでこの強烈な景気対策が加われば、景気は過熱しかねない。

 また、税収が落ち込む中での大型財政政策の発動は必然的に国債の大量増発を伴うが、それは需給悪化、つまり国債価格の下落(利回りの上昇)を引き起こしかねない。

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