真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

激化する「産業の米」半導体争奪戦 台湾囲い込みを狙う米国の意図

 会談に先立って、4月12日には、バイデン大統領が国内外の半導体メーカーやユーザーである自動車メーカーなど19社を集めて半導体不足について協議。これまで米国は、半導体の企画・設計はできても生産は台湾などに任せていたため、今後は米国内に自前で生産できる体制を構築するよう、大きな“ゲームチェンジ”を図った格好だ。

 そうした動きを見ても分かるように、いまや様々な機器に不可欠な半導体を制することが、国家の行く末をも握りかねない状況にある。だからバイデン大統領は、「半導体を自前で生産する」と高らかに謳った。これこそ、行動経済学でいう「バンドワゴン効果」と言えるだろう。バイデン大統領がバンドマスターとなり、「米国での半導体生産」というバンドワゴン(楽隊車)が高らかに音を鳴らし、世界中に鳴り響かせている。このバンドワゴン効果につられるように、米中を中心とした二大陣営が半導体争奪戦を繰り広げているのだ。

 銃口を向け合うような“ドンパチ”こそ起こっていないが、情報戦、そして半導体争奪戦といった形で「米中戦争」は既に現実のものとなっている。視野を広げれば、半導体製造に欠かせない機械や部材を手掛ける日本企業にとっては、「日の丸復権」に向けた最後のチャンスとも言えるだろう。かつて半導体の国際競争で一敗地にまみれた日本勢が、今般の半導体争奪戦の行く末にどれだけ存在感を高めていけるか、要注目であることは言うまでもない。

【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。法政大学大学院教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。

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