田代尚機のチャイナ・リサーチ

ファーウェイが開発した「Harmony OS2」が米国の安全保障上の脅威になる

 中国家電メーカーの美的、調理機器メーカーの老板電器をはじめ、1000社を超える有力企業が開発に参加しており、スマホで家電を操作したり、調理器具を操作したりということが一気に現実味を帯びてきた。製造業では圧倒的シェアの大きい中国でこうした動きが加速しているということは、今後、このOSがグローバルでIoTの標準的OSに発展する可能性が高まっているということである。

厳しい締め付けをかいくぐっての開発

 華為技術といえば、アメリカが厳しい規制対象としている企業である。具体的な措置を紹介するとおよそ以下の通りである。

 アメリカ商務省は2019年5月、華為技術とその関連企業68社をエンティティリスト(輸出規制の対象となる企業リスト)に載せた。これにより華為技術は事実上、アメリカ企業から部品などを購入できなくなった。グーグルはこの措置に従い、華為技術の製品に利用されるAndroid(OS)の更新や、グーグルプレイの利用を禁止。それにより、華為技術のスマホは海外市場において競争力を失った。

 アメリカは2020年に入り、5月、8月と2回にわたり、華為技術に対して半導体の輸出を禁止する措置を発表した。それはアメリカの半導体製造装置を使って作った半導体にも適用されることになった。

 華為技術は自社グループ内に半導体設計会社を持っており、半導体「麒麟」を自社開発しているが、製造は台湾のTSMCに委託していた。TSMCはアメリカの製造装置を使って半導体を製造しているため、華為技術は自社の半導体を作ることも難しくなってきた。現在は、台数が多い割には利幅の薄い汎用スマホ部門を売却、様々な形で、様々なところから、半導体をかき集めることで、何とか主力ブランドの製造を続け、生産量を落としながらも、国内市場を守り抜こうとしている。

 華為技術はこうしたアメリカからの厳しい締め付けをかいくぐって、「Harmony OS2」の開発に漕ぎつけたということだ。

 中国のソフトウエアはAIにしろ、アプリケーションにしろ、世界有数の実力を有している。しかし、オペレーションシステム、コンパイラ(プログラミング言語を処理するプログラム)、プログラミング言語、データベースシステムといった基礎となる部分においては、ほぼすべてを海外に依存している。米中関係の悪化が更に進んだ場合、こうした技術の核となるような部分が、中国の安全保障上の大きな弱点となりかねない。

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