田代尚機のチャイナ・リサーチ

新型コロナ治療薬「プロキサルトアミド」で脚光浴びる中国の創薬ベンチャー

中国でも新型コロナウイルスの治療薬開発が進んでいる(Getty Images)

中国でも新型コロナウイルスの治療薬開発が進んでいる(Getty Images)

 香港上場の創薬ベンチャー企業、開拓薬業(09939)の株価が7月16日、12.8%上昇した。19日も急騰、一時は10.6%高まで買われたが、その後は利益確定売りに押され終値は5.7%高の74香港ドルで引けている。

 同社は16日、開発を進める新薬「プロキサルトアミド」がパラグアイから新型コロナウイルス感染症の治療薬として緊急使用を許可されたと発表、これが材料視された。

 15日には、上海復星医薬(02196)の100%子会社で投資管理業務を行う上海復星医薬産業と業務提携を行い、インドやアフリカ28か国においてプロキサルトアミドの商業化を進めると発表した。協力して各国で緊急使用申請を行い、販売活動を進めるとしている。

 上海復星医薬(02196)は中国を代表する企業家の郭広昌氏が会長を務める復星国際(00656)の中核企業で医薬品の製造を手掛けている。新型コロナの流行が始まって間もない2020年3月、ドイツのバイオ医薬ベンチャーでアメリカ・ファイザー社とも共同開発を行っているビオンテック社とmRNAワクチンの研究、中国大陸、香港マカオ地区での独占販売契約を結ぶなど、積極的に新型コロナワクチン、治療薬ビジネスを展開している。資本力のある上海復星医薬と組んだことも、同社の株価を上昇させた要因の一つであると言えそうだ。

 上場は2020年5月22日。初値は公募価格と同じ20.15香港ドルであったが、上場2日目から売られはじめ、その後厳しい下げが続き、11月4日には安値7.20香港ドルまで下げている。再び終値ベースで初値を超えたのは2021年3月15日。同社は3月11日、ブラジルで行っていた新型コロナ重症患者に対する治験結果を発表、死亡リスクが92%低下、入院日数が9日間短縮されるといった好成績だったことで、株価は急騰した。

 4月29日の場中には82香港ドルまで上昇した。その後は利益確定売りに押されたものの、ここにきて出戻ってきており、高値更新の期待が高まっている。

 この会社のPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)はどうなっているのだろうか。そもそも業績はどうなのだろうか。

 2020年12月期は純損失で5億元(85億円、1元=17円で計算、以下同様)を超える赤字を計上している。赤字どころか、売上高がゼロ。2019年12月期の売上高もゼロ。手元の資料では2018年12月期に小規模の医薬品開発会社を買収し、その買収先企業による70万元(1190万円)の売上高が立っているだけである。

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