真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

米国のインフレ加速で忍び寄る「コロナバブル崩壊」の足音

経済活動が再開するにつれて米国の物価も大幅に上昇(写真/EPA=時事)

経済活動が再開するにつれて米国の物価も大幅に上昇(写真/EPA=時事)

 人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である法政大学大学院教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第22回は、コロナ禍で急速に進んだ株高の先行きについて予測する。

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 世界的に新型コロナウイルスのワクチン接種が進むなか、日本株は一進一退の展開が続いている。ソフトバンクグループやソニーグループが過去最高益を叩き出すなど好決算が目立つ日本企業も多いが、日経平均株価の3万円台への回復は遠のいたままだ。国内でもようやくワクチン接種が広がり、株高に弾みがついても良いように思えるが、世界の株式市場を取り巻く状況を見ていくと、むしろ先行き不安な材料が目につく。

 3月末には米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引で、野村ホールディングスやみずほフィナンシャルグループなどが巨額損失を被った「アルケゴス問題」が発覚。その前の1月下旬には、米国で「ロビンフッダー」と呼ばれる個人投資家たちが、空売りを仕掛けられていた米企業の株を、SNSを駆使して集団で買い上げ、機関投資家やヘッジファンドを追い詰める「個人投資家の乱」が勃発した。そして、暗号資産(仮想通貨)の代表格であるビットコインは、4月に一時700万円台まで急騰したものの、その後300万円台まで急落するジェットコースターのような乱高下相場となっている。

 これらはいずれも、各国の金融当局がコロナ対策として大規模な金融緩和を進め、市場に大量の資金が流入したことによる世界的な「カネ余り(過剰流動性)」と「低金利」がもたらした金融市場の“弊害”と言えるだろう。もっと言えば、コロナ禍で急速に進んだ株高がいよいよ弾けてしまうのではないかという“コロナバブル崩壊の予兆”と見た方がいいのかもしれない。

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