田代尚機のチャイナ・リサーチ

過去最高値更新の米国株 先行き悲観派の意見とそれでも上がる現実

資金があるから株を買い、結果として株が上がる

 経済の過熱が続くといった見方がある一方で、逆に景気は一旦ピークアウトしたのではないかといった見方もある。7月16日に発表された7月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)をみると80.8に留まっており、前月と比べ4.7ポイント低く、市場予想と比べ5.7ポイントも低い。市場関係者たちの中には“自動車、不動産、耐久消費財の購買意欲は過去十数年間で最低だ。価格の高さに対する消費者の不満は高い。早晩、物価はピークアウトするだろう”とみる者もいる。

 数量と価格の関係がアンバランスである。数量の変化が価格の変化より早い以上、物価高の中で景気は減速、企業業績の下方修正が相次ぐといった展開となりかねない。

 経済要因のほかにも、新型コロナウイルスのデルタ株が米国をはじめ世界で蔓延し始めている点を懸念する市場関係者も多い。

 こうして整理してみると、悲観派の見方にはかなりの説得力があるように見える。しかし、悲観派はこの10年余りの間、間違え続けたという実績(?)がある。株価は理屈通りには動かない側面もあるのだ。

「買いたい銘柄があるから株を買い、その結果として株価が上がる」のではなく、「資金があるから株を買い、その結果として株価が上がる」という現象が起こっている。FRBが株式市場の動向に注意を払い、潤沢な資金を市場に供給し続ける限り、株価は上昇するのではないだろうか。

 はたして今後、FRBが株価下落を容認してまでも流動性を引き締めなければならないような事態が起きるだろうか。長期金利の上昇、あるいはその最大の原因となる物価の上昇をとめられなくなるような事態が起きるだろうか。注意すべきはそうした点だろう。結局、今の株価の動向はFRBの能力やその限界にかかっているといえそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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