キャリア

女性の社会進出が進むことで「男も女も結婚相手がいなくなる」皮肉な現実

 アメリカでは1990年代以降、高校卒業率でも大学・大学院の進学率でも女性が男性を上回るようになり、その結果、20代では女性の平均収入が男性を超えました。2012年には、大学教育を受けた未婚の若年女性100人に対して、同様の教育を受けた若年男性は88人しかいませんでした。また、1960年には若年未婚女性100人に対して働いている若い男性は139人でしたが、男性の失業率が上がったことで、2012年には働く若い男性は91人しかいなくなりました。

 この傾向が続くと、2020~39年の間に、同等の高等教育を受けた男性のパートナーがいない女性は4510万人になります。2019年の金融機関の調査レポートでは、「2030年までに、25歳から44歳の働く女性の45%が独身で子供がいない状態になる」と予測されています。

 こうしたデータをブログで紹介したところ、SNSで議論が沸騰しました。女性からは、「結婚相手が自分より高収入である必要はない」「結婚=幸せというのはステレオタイプの価値観」「女性の経済的自立は歓迎すべきこと」……などといった意見が見受けられました。

 社会調査では、男性も女性も若者たちの大多数は、いまもパートナーと出会って恋愛し、結婚して家庭をつくることを人生の目標としています。もちろん私は、女性の社会進出を否定しているわけではありません。ここで指摘したのは、女性の社会進出が進めば進むほど、結婚相手が見つからない男女が増えてしまうという皮肉な現実です。

 ちなみにアメリカでは、ハイパーガミーを満足させるハイスペックな男性は「身長6フィート(182cm)以上」「腹筋が6パック」「年収6ケタ(10万ドル)以上」の「トリプル6」だそうです。婚活サイトのデータによると、34人の高学歴女性に対し、この条件を満たす理想の男性は1人しかいません。逆にいうと、男女同数として残りの33人(97%)の男は恋愛の選択肢から外されています。

 光が強ければ強いほど、影もまた濃くなります。「自由で平等でリベラルな社会」は多くのひとを幸福にしましたが、恋愛難易度が上がって「無理ゲー」化するのも「リベラル化の必然」なのでしょう。

参考:Vincent Harinam(2021)Mate Selection for Modernity, Quillette

【プロフィール】
橘玲(たちばな・あきら)
1959年生まれ。作家。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。その他の著書に『上級国民/下級国民』『スピリチュアルズ「わたし」の謎』など。リベラル化する社会の「残酷な構造」を解き明かした最新刊『無理ゲー社会』が話題に。

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