大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

岸田政権につきつけられたエネルギー政策の課題 ポイントは「原発」と「節電」

 主なポイントは2つある。

 1つは「原発」だ。基本計画は2030年度の電源構成で原子力を20~22%と見込んでいるが、2020年度の総発電量に占める原発の比率は3.9%でしかない。にもかかわらず、基本計画は原発の建て替えや新増設を明記しなかった。結局、既存の原子炉の“寿命”を、原則40年から1回に限り最長20年延長できることにして“なし崩し” 再稼働で乗り切ろうとしていたわけだが、原発を取り巻く状況を見ると、それは極めて難しい。

 現に、莫大な費用をかけて安全対策工事を行なった柏崎刈羽原発や静岡県の浜岡原発なども再稼働の見通しは立っていないし、そもそも福島第一原発事故以来10年以上停止している原子炉を再稼働するのはリスクが高すぎる。

 私自身は著書『原発再稼働 最後の条件』(小学館)で、事故原因を徹底的に調査・検証し、同じ過ちを繰り返さないための安全対策を提言した。そして、電力会社や政府機関など原発関係者たち=いわゆる「原子力ムラ」の“傲慢”を払拭できるかどうかが再稼働の「最後の条件」だと述べた。

 具体的に言えば、原発の建設・運転については国が全面的に責任を負い、9電力会社がバラバラに運用するのではなく1社にまとめ、第三者委員会がチェックする体制を整えるべきなのだ。しかし結局、「原子力ムラ」の実態は変わらず、従来の“総無責任体制”のまま、再稼働の機会を狙っている。

 一方、イギリスは2030年までに最大8基の原子炉を新設する新しいエネルギー計画を発表し、フランスも原発推進に舵を切った。中国は原発を続々と建設中だ。ウクライナ戦争で世界の原発シフトはいっそう進むだろう。日本の原発政策だけが、政府の“問題先送り”体質によって膠着状態になっているのだ。

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