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1本200円でも買いたい?「ヤクルト1000」人気を支えるヤクルトの企業特性

ヤクルトだから大ヒットにつながった(宅配用の「Yakult1000」)

ヤクルトだから大ヒットにつながった(宅配用の「Yakult1000」)

 売り切れ店が続出し、空前の大ブームとなっている、ヤクルトの乳酸菌飲料「ヤクルト1000」シリーズ。同シリーズは、宅配用の「Yakult1000」と店頭販売用の「Y1000」に主に分かれており、ヤクルト本社広報担当者によれば、「宅配用の『Yakult1000』は、1日あたり114万7000本(2021年4月~2022年3月)、店頭販売用の『Y1000』は発売から2022年3月までの実績として、1日あたり20万本の販売数計画を4割程度上回って推移しました」という。

 値段は、「Yakult1000」が100mlあたり130円で、「Y1000」が110mlあたり150円と決して安くはない価格設定だ(ともにメーカー希望小売価格)。しかし、元ヤクルト本社・広告部長でマーケティングコンサルティング会社「ビモクリ」代表取締役社長の平野淳氏が言うには、同社で行なったヤクルトの商品のリサーチでは、こんな驚きの結果が出たという。

「一般の方に『ヤクルト1000はいくらだと思いますか』と聞いたところ『1本200円』という回答が挙がったんです。顧客のみなさんが、同商品に非常に高い価値を感じているということです」

 オークションサイトなどでは、ヤクルト1000の高額転売も横行し、ヤクルト本社広報室が注意を呼びかける事態にもなっている。

 なぜこのような値段設定でも買いたいと思うのか。同商品は「機能性表示食品」で、「ストレス緩和」「睡眠の質向上」といった表示がされていて、それを実感できるとの声があがっているが、それ以上にヤクルトという企業が持つ特性も関係しているのではないか、と平野氏は分析する。

「ヤクルトでは商品を売り出す際、『営業』の文言は使いません。代わりに世の中に良い物を知らしめていくとの意味を込めて『普及』という言葉を使います。なので、売ろう売ろうとするのではなく、健康面などでの重要性を訴えていくべきだとの考えのもと価値を伝えていくから、顧客の方々に受け入れてもらいやすいのだと思います。もしこの『普及活動』という概念がなければ、ヤクルト1000はこれほどヒットしていなかったと思います」

『経済界』編集局長の関慎夫氏は、「ヤクルトの製品を宅配する『ヤクルトレディ』の存在が売れ行きに繋がっている」と語る。

「ヤクルトレディは単に商品を宅配するだけでなく、顧客に商品の特長を説明する役割も果たしています。広告などでの宣伝に加えこうして対面でも訴えることで、絶大な購入促進効果が発揮されている。さらにこのシステムは全国にまで張り巡らされているため、顧客のパイが大きいのもヒットの理由となっているのでしょう」

 ブームはまだまだ続きそうだ。

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