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ロシア下院議長が米国に返還要求? 150年前、アラスカはなぜ「720万ドル」の安値で売却されたのか

ロシア下院の議長でもあるビャチェスラフ・ボロージン氏(Getty Images)

ロシア下院の議長でもあるビャチェスラフ・ボロージン氏(Getty Images)

米国が買った他の領土より「安い」アラスカ

 しかし、民主国家であれば、政府のやることに何かしら反対の声があって当たり前。領土買い取りの詳細が国民に明かされず、後で結果だけが報じられればなおさらである。

 アメリカがアラスカを購入した1867年当時、アメリカ国内においてアラスカの価値を理解する者は少なく、大顰蹙を買ったのは前述した通りだ。では、このときの買い取り価格である「720万ドル」は、現在の貨幣価値に換算していったいどれほどの金額になるのか。

 2019年に当時のアメリカ大統領ドナルド・トランプがデンマーク領グリーンランドの買い取りを言い出したことを機に掲載された米紙『ニューヨーク・タイムズ』の翻訳記事(*)によると、1867年当時の「720万ドル」は現在の価値で1億2500万ドルに相当するという。

【*注/「グリーンランドだけではない 外国を何度も買ってきた、アメリカの歴史」(朝日新聞『GLOBE+』2019年10月7日掲載)】

 この価格は、高いのか安いのか。比較のために、アメリカが購入した他の地域についても取り上げた同記事の記述から紹介する。

【1803年】フランスから1500万ドル(現在の価値で3億4000万ドル)でルイジアナ(約214万平方キロメートル)を購入
【1819年】スペインから500万ドル(同1億100万ドル)でフロリダを購入
【1848年】メキシコから1500万ドル(同4億8700万ドル)で領土(約136万平方キロメートル)を購入(メキシコ割譲)
【1854年】メキシコから1000万ドル(同3億500万ドル)で現在のアリゾナ州とニューメキシコ州の一部を取り囲む地域(約7800万平方キロメートル)を購入

 単純に金額だけを見れば、アラスカの「720万ドル」はかなりの安値である。フロリダの購入価格はアラスカを下回っているが、アラスカの面積が170万平方キロメートルを超えるのに対し、フロリダのそれが10数万平方キロメートルなのを見れば、やはりアラスカの安さが浮き彫りになる。

 ルイジアナにしても、面積は約214万平方キロメートルで、アラスカより一回り広い程度。それでもアラスカの2倍以上の金額で売買された。売買契約に至るまでの事情がそれぞれ異なるとはいえ、アラスカの安さはやはり際立っている。

 それにも関わらず大顰蹙を買ったのは、当時の国民の多くから、アラスカにはその金額に見合う価値なしと目されたことにある。

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