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テレビ用のスピーカーが大ヒット 高齢者の「耳元革命」に挑むメーカーの開発秘話と販売戦略

スピーカー市場に活気をもたらす「耳元革命」が進行中(左は「ミライスピーカー」、右は「みみもとくん」)

スピーカー市場に活気をもたらす「耳元革命」が進行中(左は「ミライスピーカー」、右は「みみもとくん」)

 5月に老舗メーカーの「オンキヨー」が破産するなどスピーカー市場が縮小し、販売台数の前年割れが続くなか、大ヒットしている商品があった。テレビの音を格段に聞きやすくする“耳元のお供”のブームに迫る。

「最近、ニュースを見ていてもアナウンサーの声がよく聞こえないんです。ドラマも役者が何を言っているかわからない。それでボリュームを上げると家族に『音が大きくてうるさい』と注意されて困り果てています。ずっとモヤモヤしながら画面を眺めるしかない……」

 こんな悩みを打ち明けるのは、都内在住のAさん(71歳男性)。

 年をとると、多くの人が「耳が遠くなる」という現実に直面する。聴力は20代をピークに徐々に低下し、一般的に50代に入ると話し声が聞き取りにくくなるといわれている。こうした加齢による「老年性難聴」は50歳から高い音が聞こえにくくなる兆候が現われ、65歳を超えると急増。60代後半では3人に1人、75歳以上では7割以上が発症するとの報告がある。

 そんななか、Aさんが抱える「テレビの音量問題」を解決する商品が飛ぶように売れている。音響製造・販売を手がける株式会社サウンドファンの「ミライスピーカー・ホーム」(税込2万9700円)だ。

 2020年5月に販売開始し、約2年半で10万台を突破。しかも発売2年目の販売台数は1年目の約4倍と、売り上げは右肩上がりだ。

 スマホの普及に押されて音響市場が縮小するなか、なぜこの製品がバカ売れしているのか。サウンドファンの取締役CMO・金子一貴氏が語る。

「ミライスピーカーの誕生は創業者の父親が難聴になったことがきっかけです。“どうにか音を聞き取りやすくできないか”という思いで2年間試行錯誤を重ね、2015年に補聴器なしでも音が聞こえるスピーカーの開発に成功しました。当初は空港や銀行、高齢者施設など企業向けに販売していましたが、その技術を広く社会で活かすため、2020年5月から難聴で悩む人のために個人向けの販売に踏み切りました」

 購入者からの評判は上々だ。

「多少の個人差はありますが、8割強の方には『聞こえやすくなった』と評価していただいている。耳が遠い人にも、そうでない人にも音がクリアに聞こえるため、『音量のことでケンカしなくなった』『音量を気にするストレスがなくなった』といった声も多く寄せられています」(金子氏)

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