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テレビ用のスピーカーが大ヒット 高齢者の「耳元革命」に挑むメーカーの開発秘話と販売戦略

「ミライスピーカー」の構造は曲面で、その板を振動させて音を出す

「ミライスピーカー」の構造は曲面で、その板を振動させて音を出す

「大河」が楽しくなる

 縦14.3cm、横8.6cm、奥行21.2cmの小さなスピーカーの中に人気の秘密が詰まっている。コンパクトだが、性能は折り紙付き。置くだけでテレビの音がはっきり聞こえる「耳元革命」が起こるのだ。鍵となるのは従来のスピーカーとはまったく違う「曲面サウンド」という特許技術。

 金子氏が語る。

「一般的なスピーカーはコーン型と呼ばれるすり鉢状の形状ですが、ミライスピーカーの構造は曲面で、その板を振動させて音を出します。曲面サウンドには『離れていても、言葉がはっきりとクリアに聞こえる』という特徴があります」

 一般的に、音は遠くに行けば行くほど小さくなるが、曲面サウンドではその減衰率が比較的小さい。そのため、テレビから離れた場所でも、音量をあまり上げなくていい。

「曲面サウンドは人が話す言葉の音域が強く出るため、従来のサウンドに比べて、効率的に音を耳に届けることができる。また、振動板の動きからシミュレーション解析を行ない、高齢者が聞こえづらい高音域を広範囲に届けることができるのも実証済みです」(金子氏)

 利用者のほとんどは60代以上だが、購入者には50代以下も多い。

「ご両親にプレゼントするというケースが多く、先日の敬老の日には多くのギフト購入がありました」(同前)

 埼玉県在住のBさん(81歳男性)が嬉しそうに話す。

「これまでは食事中にテレビを見ようとするたびに、同居する息子家族と音量の問題で言い争うばかり。でも、妻が気をつかってミライスピーカーを買ってくれたおかげで、いまでは息子家族も一緒に大河ドラマを楽しめています」

 ウェブ広告だけでも販売ペースは順調だったが、より多くの人に知ってもらうため、今年4月からはテレビCMの放送を開始。売り上げをさらに伸ばしている。

「ミライスピーカーが人気となった一番の要因はやはり、難聴で悩む人が多いからだと思います。日本に1400万人いるといわれている難聴者の補聴器普及率は約14%程度。聞こえづらさを抱えたまま生活を送っている人が多いんです。老眼鏡をかけるのは心理的抵抗が少ないのに、補聴器をつけるのは気持ち的にも価格的にもハードルが高く感じる方が多く、そのような方にお届けできたんだと思います」(金子氏)

 テレビCMに起用されているのは高田純次(75)だ。

「耳元の問題をネガティブに捉える方が非常に多いため、CMはポジティブなイメージをつけたかった。高田さんの高齢でありながらそれを感じさせないパワフルさは効果覿面。CMでは『大人の耳』というコピーを使っています」(同前)

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