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パチンコ店にとって新たな脅威か 議論が進む“NFTガチャ”と“三店方式”の可能性

NFTのランダム販売と二次流通市場を併設したサービスを行う「NBA Top Shot」(公式サイトより)

NFTのランダム販売と二次流通市場を併設したサービスを行う「NBA Top Shot」(公式サイトより)

NFTガチャの“三店方式”は認められるか

 日本で数少ないカジノの専門研究者である国際カジノ研究所所長の木曽崇氏は今年6月、〈【デジタル三店方式?】ゲームで「カネ稼ぐ」NFTガチャ賭博成否論の最前線〉と題した動画を自身のYouTubeチャンネルで公開している。木曽氏は、同じくNFTガチャの二次流通市場の議論をパチンコの“三店方式”を引き合いに出して紹介している。

 ここで改めてパチンコの“三店方式”について説明しておこう。パチンコ・パチスロは公的に認められた“公営競技”ではないので、獲得した出玉(パチンコ玉・メダル)をそのまま現金に交換すると賭博罪が成立する。しかし、出玉を一旦“特殊景品”に交換し、それを古物商である“景品交換所”に持っていき、そこで買い取ってもらうことで換金することが可能だ。景品交換所が客から買い取った特殊景品は、今度は景品問屋が交換所から買い取り、パチンコ店に卸している。

 景品交換所がパチンコ店と同じ組織である場合は、“景品の自家買い”となり賭博罪が成立する。しかし、パチンコ店と景品交換所の間に、客と景品問屋が入ることで、“自家買い”を避けているシステムなのだ。パチンコ店、景品交換所、景品問屋の“3つの業者”が介在していることで「三店方式」と呼ばれている。

 前述の動画の中で木曽氏は、NFTガチャの二次流通市場を、ランダム販売をするゲーム会社が運営すること自体が“自家買い”に相当するのではないかと話している。完全なる第三者が運営するNFTガチャの二次流通市場については違法とは言えないが、「NBA Top Shot」のように販売するゲーム会社が二次流通市場を運営するケースについてはさらなる議論が必要だとの見解を示した。とはいえ、NFTガチャ版の三店方式が認められる方向で議論されている現状があることは間違いなく、今後パチンコ業界がNFTガチャやNFTゲームなどと競合していく可能性を指摘している。

NFTガチャがパチンコと競合する未来

 たしかに、NFTの三店方式が適法だということになれば、“NFTガチャ”でレアなアイテムを引いて、それを換金することで“ギャンブル”を楽しめるようになるのか。パチンコ業界に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏はこう話す。

「たとえば、オンラインパチンコで得た出玉を“NFT景品”に交換し、それを第三者が運営するオンライン上の景品交換所で換金するという未来もあるかもしれない。パチンコ店に行かずとも、スマホでパチンコを打って換金できる可能性が出てきているわけです。

 しかし、今回発表されたガイドラインの“NFTガチャ”はあくまでもスポーツコンテンツを活用したサービスの話であり、“オンラインパチンコゲーム”のようなものについては、別個の議論が必要になるでしょう。

 ただ、パチンコユーザーのなかには“パチンコが打ちたい”のではなく、“お金を増やしたい”という目的の人も少なくありません。スポーツに興味がなくても、“儲かるかもしれない”というだけで、お金を投じるユーザーが一定数いるんです。パチンコ業界は、そういったユーザーをNFTガチャに奪われる可能性があるということです」

 年々市場規模が縮小しているパチンコ業界にとって、今後実現するかもしれない“NFTの三店方式”は大きな脅威となるかもしれない。(了)

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