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国民年金を厚生年金で穴埋め 岸田政権が進める「令和の年金大改悪」の姑息なトリック

 試算した厚労省に将来の国庫負担金について問うも歯切れが良くない。

「こちらはまだ検討するかもしれないという段階です。現時点では仮定ですからなんとも言えないですね」(年金局数理課)

 これまで政府の年金改革は、目先の年金財政をまかなうために「給料天引き」で保険料の取りっぱぐれがないサラリーマンの厚生年金をかき集めようとしてきた。

 今年4月からは、働きながら年金を受給する65歳未満の「在職老齢年金」の支給カット基準が緩和(※注)されて早期リタイアを防ぎ、この10月からは「週20時間以上」勤務するパートは厚生年金加入が義務化、「年収130万円」を超えるパートも配偶者の扶養家族から外れ、厚生年金等に加入して自分で年金保険料を支払わなければならなくなった。

【※注/60~64歳に厚生年金に加入して働きながら年金を受け取る場合、給料と年金(報酬比例部分)の合計が「月28万円」を上回ると超過分の半額の年金がカットされたが、その基準が「月47万円」へと大幅に緩和された】

 いずれもサラリーマンを長く働かせ、パートなど短時間労働者もどんどん厚生年金に加入させることで、保険料収入を稼ごうという目的だ。年金財政からいえば、加入者が増えるほど将来の年金支払いも増える。それでも「将来の負担など考えずに目先の保険料収入」で年金を支払っていく“自転車操業”そのものといっていい。

「いまや100年安心と言った2004年の年金改革が完全に失敗だったことがわかった。マクロ経済スライドは経済が成長していくなかで、受給者が気付かないように年金の価値を少しずつ減らしていく仕組みだが、長い期間、日本経済は成長せず、賃金も伸びなかったから機能しなかった。現在の年金制度はとっくに限界を迎えている。それなのに、国民年金を厚生年金で穴埋めするというのは、今なお経済成長で賃金が上がり続けることを前提にした発想。こんなことを続けては早晩、行き詰まるでしょう」(北村氏)

※週刊ポスト2022年10月21日号

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