家計

自治体を全面的に信用するのは危険? 役所から突然「借金500万円」請求された女性の危機一髪

“役所だからしっかりしている”と考えていると…(イラスト/大窪史乃)

“役所だからしっかりしている”と考えていると…(イラスト/大窪史乃)

「あなたは連帯保証人になっているので、お金を支払ってください」──。もしも自治体からそう請求されたら、深く考えずにその言葉に従ってしまう人もいるかもしれない。とはいえなかには、本来支払うべき必要のないものまで払わされてしまうケースもあるという。ここでは62才・会社員女性の実体験を紹介するとともに、そうした際にどう対応すべきか、専門家のアドバイスを聞いた。

 * * *

利息の延滞金? 訳のわからない理由で自治体から取り立てが

 美容サロンを経営していた兄(享年60)が7年前に急死したときのことです。経営していた店の借金などが億の単位にまで膨れあがっていたことがわかり、兄の妻と子供2人は相続を放棄。祖父母、両親は他界していたので、妹(当時55才)の私のところに相続の権利が回ってきました。もちろん私もすぐに相続放棄。

 ところが、兄が住んでいた街の役所から、「あなたが連帯保証人になっている借金が500万円あります。支払ってください」と請求が届いたのです。それは、30年前に自治体が主導で推進していた駅前再開発による店舗移転のための“借金”でした。兄はそれまで、駅前の商店街に店を開いていましたが、自治体のすすめで新たに建てられたビルの中に移転。そのためにビルの2区画を購入することになり、お金を借りたのです。

 確かに私はそのとき、兄の連帯保証人になりました。というのも当時兄は、「自治体が第一抵当権を持っているから、おれが払えなくなっても、ビルの2区画を売れば相殺されるはず。お前には迷惑をかけない」と言っていたからです。心配するなとばかりに、保証人書類の控えすらくれませんでした。

 役所に相談に行くと、「第一抵当権など関係ない。連帯保証人のあなたには払う義務がある」の一点張り。契約書類などを見せてほしいと言っても、当時の担当者がいないのでわからない、後日連絡するからなどとはぐらかされ、書類は見せてもらえません。それで不信感が募りました。

 そもそも、借金返済が滞っているなら、連帯保証人にも連絡がくるはずなのに30年以上も音沙汰がないのはおかしい。そう思い、弁護士の無料相談を数か所巡りました。すると、その中のひとりから、「保証人に返済関係の書類提示や、返済状況の連絡がないのは“不実告知”【*】にあたるかもしれない」と言われました。

【*事業者が一定の重要事項について虚偽の情報を提供することで、消費者がその事実を誤認して契約締結をした場合に取消権を認めるもの】

 それを武器に自治体に立ち向かおうとしたところ、「例のビルの2区画が売れたので借金額は減りました。500万円の利息に付いた延滞金の150万円だけ払ってくれればいい」と連絡が。

 意味がわからず、再度、弁護士に相談したところ、「利息に付いた延滞金の支払いなど、いまどき消費者金融だってやらない」と──2区画は誰にいくらで売れたのか、150万円とはどこから出てきた数字なのか、自治体にその後も問い合わせを続けましたが、「調べて折り返す」を繰り返すだけで、連絡がきませんでした。

 そんなある日、突然役所から電話があり、「あなたには請求しません」と言われたのです。理由も教えてもらえず、狐につままれたような気持ちになりました。いずれにせよ、自治体がやることだから正しいと思わず、不信感を持って対応してよかったと思っています。
(62才・会社員)

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