ライフ

父の葬儀に突如現れた「隠し子」に騒然 遺産要求で泥沼対立、解決策はあるのか

通夜の席に父にそっくりな“見知らぬ男”がやってきて…(イラスト/大窪史乃)

通夜の席に父にそっくりな“見知らぬ男”がやってきて…(イラスト/大窪史乃)

 遺産相続においてトラブルの原因となるのが「隠し子」の存在だ。被相続人の死後に隠し子が発覚した場合は、さらに事態は複雑になり、遺産の分配を巡ってもめてしまうケースも──。ここでは38才主婦の実体験を紹介するとともに、専門家に解決策を聞いた。

 * * *

通夜の席に突如現れた父そっくりの男の正体は…

 父が先日、80才で亡くなりました。食道がんで1年ほど闘病しましたが、母(64才)や私(38才)、妹(36才)をはじめ、孫たちに見守られ、安らかな最期でした。私たちは父が40代のときにできた娘ということで、本当にかわいがってもらい、これまでに怒られた覚えはありません。母とも一回り以上年が離れているということもあって、まるで三姉妹のように大切にしてもらいました。

 父の遺影は50代の頃の写真にしたのですが、葬儀社の担当者から、「イケメンですね」とほめられるほど。なんせ父は20代の頃、俳優をしていたほど目鼻立ちが整っていたんです。やさしくてイケメンの父は私たち家族の誇りでした。

 事件はそんな父の通夜の席で起こりました──。その日、葬儀場に突如、遺影の中の父が抜けて出てきたのではないか……というにはガラが悪いのですが、それでも目鼻立ちが父にそっくりな“見知らぬ男”(56才)がやってきたのです。しかも死者を弔う気がない、というような薄汚れたワイシャツにチノパン、サンダル姿で……。

 その男は、母を見定めると、真っすぐにやってきて、父の遺影を顎でしゃくりながら、大きな声で、

「おれ、この男の息子です。知ってますかねえ。ちょっと話があるんスけど。ここで言っちゃってもおれとしては構わないんですが、どうします?」と……。葬儀場が静まり返ったことは言うまでもありません。

 母は父に離婚歴があることは知っていましたが、前の奥さんは亡くなったと聞いており、息子がいることまでは知らなかったようです。父の死に憔悴していた母は、さらに顔が真っ青になるほどのショックを受け、いまにも倒れそうに……。そこで、私が別室で応対することにしました。

「おれはオヤジが24才のときに生まれています。おふくろはとっくに死んでいますがね。で、あいつの遺産っておれの分もありますよね」

 と、こう言うわけです。なぜ父の死を知ったのかといえば、地方紙に掲載された葬儀告知記事を見たとのこと。父は会社を経営していたので、「家族葬にする」という旨の広告を出したのですが、まさかそれを見ていたとは……。

 その日は「調べてみます」と言って、お引き取りいただきましたが、翌日にすぐ電話がきました。母は寝込んでしまうし、妹夫婦は、「あんな失礼な人に渡したくない」と大騒ぎ。

 私の夫が戸籍を確認すると、確かに父には息子がいました。そうなると彼には遺産を相続する権利があります。戸籍を見てさらにわかったのは、父の離婚歴は1回ではなく2回だということ。例の男は最初の結婚のときの子供で、2回目の結婚のときにも、なんともう1人息子がいることまで判明……。父だけでなく、父方の祖父母もそのことを隠していたことが、明るみに出たわけです。

 いまは、私たちの家族と、男の間で分配を巡ってもめています。妹夫婦は、「葬式をめちゃくちゃにした男には1円たりとも渡したくない」と激怒。一方、男は、「おれが母子家庭で苦しい思いをしているときに、お前らはいい生活をしていた。遺産は分けて当然だろう」と毎日のように母に電話をかけてくる。

 遺産といっても、両親が住んでいた古いマンションと3000万円の貯金。私は相続放棄して、母に全額を渡し、老後資金にしてもらおうと思っていたのですが、男の登場で予定が狂いました。

 相続放棄の期限の3か月が過ぎ、次は相続税の納付期限までに決着をつけたいのですが、現在は膠着状態。法律的には分配するのが正しいのでしょうが、「息子」対「母&妹夫婦」が感情的になっていて話し合いが進みません。

 さらに、いまだ連絡先がわからない、2人目の息子もいつ何を言ってくるかわかりません。まさか最後の最後に、こんな秘密を父に突き付けられるなんて‥‥。せめて、隠し子のことも含めて遺言書を残してくれればよかったのにと、仏壇に手を合わせ、父の男前な遺影を恨めしく眺めつつ、愚痴る毎日です。(38才・主婦)

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。