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簡単に答えられない「お金とは何か」問題 「物々交換から発展」の通説に隠された禍々しい本質

「お金の起源」に潜む禍々しい本質とは(イメージマート)

「お金の起源」に潜む禍々しい本質とは(イメージマート)

 人類の経済活動に欠かすことのできない「貨幣」。石や貝殻などがお金として使われた時代や地域も存在するが、その後、時代や地域ごとに通貨や紙幣が作られ、近現代以降は各国の中央銀行が発行する通貨を元にした国際通貨体制となった。今や、その枠に収まらない仮想通貨も出現している。一方で、貨幣(お金)そのものの起源については、諸説があるようだ。金融・経済を題材にした小説『エアー2.0』『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』などを手がけてきた小説家・榎本憲男氏は、「お金の起源にまつわる通説は、その禍々しい本質を隠している」と指摘する。どういうことか。榎本氏が「お金とは何か」という問題を考察する。

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 以前、借金というのは経済のシステムには欠かせないが、いまはそれが人や社会をコントロール(支配)するために用いられているということを書いた(マネーポストWEB記事「資本主義の根幹である『借金』が生み出す支配/被支配の構図 それは人類に突きつけられた『呪い』なのか」参照)。ここではこの借金についてもうすこし深掘りして考えてみたい。そして実は借金がお金の元型だということを語ってみたい。

 経済学では“お金”などという言い方はしないで、“通貨”や“貨幣”という言葉を使うことが多い。ただ、このコラムでは“お金”を使うことにする。また、通貨や貨幣という言葉は、使う人によって意味合いが変わる場合がある。例えば、日銀では貨幣という言葉は硬貨のみを指して紙幣は入らないのだそうだ(紙幣は「銀行券」と分類されている)。これは経済学一般の使い方ともちがう。僕がいう“お金”は通貨も貨幣も飲み込んだものだと思っていただきたい。

 お金は物々交換から発展したという説明が一般的である。お金がなかった大昔には、人々は物々交換をしていた。しかし、これはいろいろと効率の悪い取引だった。例えば、Aさんが、自分の魚と、Bさんの豚とを交換したいと思っていても、相手が魚を食べたくないと思ったら交換ができない。また、豚一匹につき魚何匹と交換するのが適当なのかの相談も面倒だ。つまり、“欲求の一致”が必要で、これに至る道はかなり険しいことが想像される。

 また財産としての魚や肉はずっと持っていると腐っていくので、食べきれないほど抱えていてもあまり価値がない。なににでも交換できるもの、交換の仲立ちになってくれるものなら、小麦だってじゃがいもだって香辛料だって釘だっていいのだけれど、やがて貴金属が、モノとモノを仲立ちするものとして社会に浸透していった。金(ゴールド)や銀は腐食しにくい。また、大きな塊から小さなものを小分けにして取り出せるし、異物が混入しても溶かして純化することも、またその逆も可能だ。このようにいろいろと便利なので、金(ゴールド)や銀がお金として流通しはじめたのである。

 誰もが、一度や二度はこのような説明を聞いたことがあると思う。テレビのワイドショーの「そもそもお金はどうしてできたのでしょうか」的なコーナーで、物知りの司会者が上のような説明を、生徒役の芸能人の方々にしているところを僕も見たことがある。経済学っぽくいえば、【1】交換手段、【2】価値尺度、 【3】保存において便利なのでお金が生まれたという説である。この説は直感的にも納得がいきやすい。

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