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【復活できない名門「東芝」】“倒産せず”で再建は泥沼に、リーダーも見当たらず

不正会計問題で引責辞任した歴代3社長(左から西田厚聡氏、田中久雄氏、佐々木則夫氏/時事通信フォト)

不正会計問題で引責辞任した歴代3社長(左から西田厚聡氏、田中久雄氏、佐々木則夫氏/時事通信フォト)

“日の丸家電”の一角だった東芝が国内企業十数社の共同出資によって買収され、ついに非上場化に向かう見通しだ。これから本格的な再編へと舵を切るが、社員12万人には“茨の道”が待っている──。『東芝解体』の著者・大西康之氏がその深層に迫る。東芝再建が泥沼化する背景には5つの理由があり、ここではその2つを紹介する。【全3回の第1回】

「東芝解体」が始まる。東芝との優先交渉権を持つ国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が2兆2000億円程度の買収提案を出した。実現すれば投資ファンドの元で不採算事業や不稼働資産の売却、人員削減といったリストラが加速する。

 だが経済産業省の影が見え隠れする今回の手法では、かつて死地からの生還を果たした日本航空(JAL)や日産自動車のような復活劇は望めそうにない。国家に取り憑かれた東芝を待つのは「緩やかな死」。東芝再建が泥沼化する背景には、企業再生の原則を無視した5つの理由がある。

【1】「倒産」は極めて不都合

 まず東芝再建が泥沼化する最大の理由は「倒産しない」ことだ。

 東芝は2017年に約6000億円の増資をしているが、この時点で2年連続の債務超過だった。2015年に発覚した粉飾決算がなければ、財務の破綻はもっと早く表面化していたはずで、裁判所に会社更生法か民事再生法の適用を申請して「倒産」するのが、最も一般的かつ確実な再生の道だった。

 なぜ倒産した方が再生しやすいのか。それは裁判所が選任した管財人が全権を握り、コストカットを一気呵成に進められるからだ。

 2010年に2兆3000億円の負債を抱えて倒産したJALは、会社更生法が適用されたことにより、1万6000人の人員削減や金融機関による5215億円の債権放棄、資本金2150億円の100%減資などが実行された。さらに不採算路線の廃止や維持費の高かった大型機103機の退役など、政治的なしがらみで手をつけられなかった部分に大鉈を振るった。

 会長に就任し再生の立役者となった稲盛和夫氏は筆者の取材に対し「倒産という劇薬を使っていなかったら、再生は難しかった」と語っている。

 だが東芝は倒産しない。改正外為法で国が特に重要な「コア業種」として位置付ける原子力事業を抱え、防衛省からレーダーシステムなどの開発を委ねられているからだ。外資が買収する時にも国の重点審査が必要になる。

 東京電力福島原発事故の後始末である廃炉作業を請け負っているのも東芝だ。そんな会社が「倒産」するのは経産省にとって極めて不都合であり、国家の沽券にかかわる。

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