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令和のエンタメでも「上京」が支持されるワケ 世代を超えて共有される高揚感と劣等感

時代を牽引した「上京ドラマ」年表

時代を牽引した「上京ドラマ」年表

いつの時代も“ドラマの華”

 タワーマンションや港区女子、丸の内メーカー勤務などいまの東京を体現するキーワードがちりばめられたツイッター発のショートストーリー集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』も大反響を得ている。そこで綴られる“東京物語”は決してきらびやかではなく、シビアでほろ苦いもの。例えば、特にSNS上で反響が大きかった「3年4組のみんなへ」はこんな書き出しから始まる。

〈3年4組のみんな、高校卒業おめでとう。最後に先生から話をします。大型チェーン店と閉塞感のほかに何もない国道沿いのこの街を捨てて東京に出て、早稲田大学の教育学部からメーカーに入って、僻地の工場勤務でうつになって、かつて唾を吐きかけたこの街に逃げるように戻ってきた先生の、あまりに惨めな人生の話をします。〉

 著者の麻布競馬場さんは世代を超えた予想外の反響に驚いたと語る。

「もともとは匿名アカウントとしてツイッターに小説を投稿していたのですが、そのときの反応を見ると、共感しているのは自分と同じ30才前後の世代のように感じていました。だけど実際に本が出版されると大学の学食で読んでいる学生がいたり、鹿児島に住んでいるお母さん世代から『この春から上京する息子に“予防接種”として読ませたい』と連絡が来たりしました。ぼくが書いていたのは同世代独特の自意識かと思っていたけれど、もっと上の40、50代の人からも“刺さった”と言われることも少なくない。上京に伴う高揚感と劣等感は世代を超えて共通していることを実感しました」

 飛行機や新幹線などの交通網が発達し、インターネットの普及によりどこにいてもオンラインでつながれるし、最新の情報も入手可能だ。コロナ禍のテレワークをきっかけに、地方移住を考える人も増えている。にもかかわらずなぜ、いまも上京をめぐる物語に心惹かれるのか。

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