経済評論家・加谷珪一氏が投資の話題書を読み解く(イメージ)
資産形成をどのように進めれば良いのか──。話題書『井出真吾の投資相談室 63のQ&Aでわかる安心運用』(井出真吾・著)を、経済評論家・加谷珪一氏が読み解いた。以下、加谷氏の書評を紹介する。
『井出真吾の投資相談室 63のQ&Aでわかる安心運用』(井出真吾・著)
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新NISAがスタートしたこともあり、資産形成への関心が高まっている。私は30年以上にわたって経済や金融の分野に関わってきたが、ここまで多くの国民が投資に関心を寄せているのは初めて見る光景だ。
これは裏を返せば、年金減額という老後不安から来ているものであり、あまり喜べる話とはいえない。しかしながら、日本人の資産が過度に預金に偏っていたのは事実であり、豊かな人生を送りたければ、ある程度、リスクを取った資産形成が必要というのは国際常識といえる。
だが、投資である以上、株価が下落するという局面は必ず経験することになる。こうした時にどう振る舞えばよいのか、理論的根拠をもとに解説してくれているのが本書である。
著者は徹頭徹尾、データを元に議論を進めていく。株式市場というのは人間の営みの集大成であり、時代や環境が変わっても人の行動は変わらないので、ヒントは過去のデータにあるはずだ。この話は、当然といえば当然なのだが、多くの人がファクトを見ようとしない。そんな私たちに代わって、筆者は「株価は今後も上がるのか」「どこに投資すればよいのか」「リスクとリターンの関係は?」といった質問に対してデータを元に明快に解を示してくれる。
米国でトランプ政権が誕生し、高関税政策が実施されたことで、NISAを始めた途端、株価下落の洗礼を受けた人も多い。だが、本書を読めば、こうした時にどう対処すればよいのか分かるはずだ。
ちなみに私自身も30年以上にわたって投資を続け、相応の資産形成に成功しているが、本書で示された処方箋は、私自身が選択したトランプ関税の対処法とまったく同じであった。投資にはリスクがつきものであり、資産を無くす可能性もある。それでもなお積極的に資産形成したいという人は絶対に読んでおくべき一冊である。
※週刊ポスト2025年7月18・25日号