オープン当初から圧倒的人気を誇るハイボール
お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。連載第15回は、ビヤホールからの銀座はしご酒で懐かい思い出話に花を咲かせる。【連載第15回】
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ビヤホールライオン銀座七丁目店を出た私たちは、中央通りを渡り、外堀通りも渡ってから、数寄屋通りを左に入った。この細い通り沿いの6丁目と7丁目には行きつけのバーがあるのだが、両店ともに開店は夕方5時なので、まだ開いていない。しかし、何も心配することはないのだ。数寄屋通りをもう少し行けば、午後3時開店のご機嫌なバーがある。
ニューギンザビル1号館の7階にその店はある。名前は「ロックフィッシュ」。岩の魚だからイワナかっていうと、それは違います。釣りをする人ならピンとくるかもしれないが、岩礁や海藻の陰にいるカサゴとかアイナメ、ソイ、ハタなどの魚のこと。根魚(ねざかな)なんて呼び方もありますわな。この店の主の間口一就さんは四国愛媛県のご出身なので、幼少期に磯や堤防からロックフィッシュを釣って遊んでいたのかもしれません。
そんな魚の名前をバーの店名にしたところ、昼から飲みたい人間がたくさん釣れてしまった。店のオープンは2002年で、その直後には、私も見事に釣りあげられた一人ですが、あの頃、銀座近くを歩く飲兵衛たちは入れ食い状態でこの店に釣り上げられていたな。それくらい一気に流行ったのは、当時珍しかった角瓶ハイボールと缶詰のおつまみが、やたらとうまかったからです。
この店のハイボールは、アルコール度数43度の復刻版角瓶を冷凍庫で冷やしておいて、やはり冷凍庫から取りだした霜付きのグラスに注ぎ、そこにウイルキンソンのソーダを1本丸々ドボドボ注ぐという、当時の銀座では見たこともなかったハイボールなのだった。ちょっと濃いめにつくった1杯に、レモンの皮をきゅっと搾ったら完成だ。
冷たいうちに飲むに限るから、自然とピッチはあがり、1杯、1杯、また1杯……。すると、濃いめのハイボールだから、けっこう効いてくる。明るいうちからお茶の代わりに気楽に立ち寄って3杯、4杯と飲んで、さあ、仕事の打ち合わせに行こうと思ったときには酔っ払ってた、なんてことを、何度してきたことか。