日中関係の緊迫感は高まる(左から習近平・国家主席、高市早苗・首相/写真:AFP=時事)
高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁を機に、日中関係が緊迫感を高め、中国側の強硬姿勢がエスカレートしている。その圧力は日本経済にも暗い影を落とし始め、「脱・中国依存」を叫ぶ声も出てきた。どういった考え方が必要になるのか。
米中をはじめ世界の金融市場に詳しいグローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏は、日中関係の緊迫についてこう語る。
「そもそも高市首相の発言は、立憲民主党の岡田克也議員からの複数回の質問に対する法的な定義説明にすぎず、高市首相が自ら踏み込んで強硬姿勢を示したわけではないと理解しています。日本の安全保障法制では、『密接な関係にある他国への武力攻撃が発生した』『それにより日本の存立が脅かされている』『国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある』という条件がすべて満たされた時に限り、『存立危機事態』と認定され、初めて限定的な集団的自衛権行使が可能になります。
これは“台湾有事=自動的に日本が戦争参加”という意味では全くありません。あくまで『日本への重大な脅威が明白な時のみ、限定的支援が認められる』という現行法の確認にすぎず、国際法上もごく常識的な説明だと考えられます」(以下、「」内コメントは戸松氏)
それでも中国が強い反応を示したのは、「法的議論よりも、政治的文脈に起因しているのでは」と戸松氏は見る。
「中国側としては、日本における安保議論の高まりへの警戒、米国との連携強化を牽制したい思惑があるでしょう。加えて日本の野党や主要メディア、SNSによる過剰な短期反応があった。実質的には政治的コミュニケーションの問題と捉えるべきでしょう」
日中は選択的デカップリングへ
緊張関係の高まりにより、「脱・中国依存」を叫ぶ声も出てきているが、戸松氏は冷静な見方を示す。
「結論としては、“日中は短期的にはしばらく緊張が続く可能性があるが、長期的なデカップリング(経済分断)には進みにくい”というのが現実的だと思います。米中摩擦は長期テーマ化しており、企業は中長期で供給網再編を継続。半導体・インフラなど戦略物資はリスク分散が政策的に進められています。ただし、日本企業の多くは中国市場の需要も捨てられず、完全撤退は非現実的でしょう。よって『適度な距離感を保つ“選択的デカップリング”』が今後の主流となりそうです」
「脱・中国依存」が叫ばれるとはいえ、適度な距離感で付き合うことが求められるようになるという。その場合に、日本企業の見通しはどうなるのか。戸松氏は、主に次の3つのセクターの成長が期待できると予測する。
【プロフィール】
戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。
