創業来初のサラリーマン社長となった出井伸之氏(時事通信フォト)
“日の丸家電”という言葉は死語になって久しく、世界において日本メーカーの存在感はゼロに等しい。そんな中、ソニーだけは企業として変革を遂げ、最高益を更新し続けている。そのきっかけを作ったのが2022年6月に亡くなった元社長、出井伸之氏である。ノンフィクション作家・児玉博氏は、生前の出井氏に取材し、没後は関係者への取材を続け、評伝『ソニー神話を壊した男 出井伸之が創った未来』を上梓した。児玉氏が知られざる人物像に迫った。(文中敬称略)【前後編の前編】
「インターネット分野で後れると隕石で滅んだ恐竜になる」
一体、こんなソニーを誰が想像しただろうか?
記録的なヒットを飛ばす『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』を生み出し、1994年に発売された「プレイステーション」は進化を続け、今やソニーグループの売り上げ約13兆円(2025年3月期)のおよそ3分の1を担うゲーム事業の中核ともなった。かつて、こんなソニーの姿を誰が想像しただろうか。
それを想像し、目指して大改革に取り組んだのがソニー6代目社長の出井伸之だった。
出井が社長に就任した1995年はソニーにとっても、日本にとっても一大転換の時だった。ソニーは井深大、盛田昭夫といった創業者世代の“カリスマ”経営に5代目の大賀典雄で終止符を打ち、創業以来初めてのサラリーマン社長をトップに迎えた。つまり、出井以降、サラリーマンが経営判断をするという経営スタイルへの挑戦が始まったのが1995年だった。
【プロフィール】
児玉博(こだま・ひろし)/1959年生まれ。早稲田大学卒業後、フリーランスとして取材、執筆活動を行なう。2016年、第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)を受賞(『堤清二 罪と業 最後の「告白」』として単行本化)。主な著書に、『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』『トヨタ 中国の怪物 豊田章男を社長にした男』など。
※週刊ポスト2026年5月1日号
