「ドル覇権」の回復は実現するか(トランプ大統領。Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。米国のベッセント財務長官による「ドル覇権の回復」に関する発言の意味と、その実現可能性についてレポートする。
制裁方針から180度転換するベッセント財務長官の発言
米国の経済専門チャンネル「CNBC」は6月24日、ビジネスニュース番組「Squawk Box」で、ベッセント財務長官へのインタビュー内容を放送した。ドル覇権の回復に関する重要な発言があり、一部の市場関係者から大きな注目を集めている。
ポイントを整理すると次の三点である。一つ目は、現在話し合いが行われているイランとの和平合意について、イラン側による石油販売は今後、ドルに基づいて価格が決定され、ドルで決済されるようになるだろうと発言したこと。二つ目は、ベネズエラではドル体制への回帰が進んでおり今後、ドルを中核とした貿易体制になるだろうと発言したこと。三つ目は、ウクライナ紛争の収束後、ロシアはドル体制に戻ることになるだろうと発言したことだ。
イラン、ベネズエラ、ロシアに対してこれまで米国はドル体制から締め出すといった制裁を科してきたが、それを180度転換し、ドルによる貿易体制に引き戻すという意味である。
イランはSWIFT(*国際的な銀行決済システム)を回避するために全ての石油取引を人民元決済としている。ベネズエラも今年1月に米国によってベネズエラ大統領夫妻を拉致される以前は人民元建てでの石油取引が主だった。ロシアの石油取引についても人民元が主要決済通貨となっている。
この発言通りとなるのであれば、ペトロ人民元化(*原油取引の決済を米ドルでなく人民元で行う仕組み)の阻止を通じて、ドルへの信頼回復、流動性の強化といったドル覇権の回復が期待できる。ドルの価格(ドルインデックス)は短期的には米国を中心とした各国のインフレ率、金利、貿易状況、為替政策などの動向に大きく左右されようが、長期的にはドルの流動性の高まりなどからドル高基調となりそうだ。円については円安基調が続きかねない状況だ。
