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異次元の少子化対策の財源に「社会保険料が狙いやすいワケ」 年金、介護よりも「医療」が本命視される理屈

次の負担増の“ターゲット”は…(「こども未来戦略会議」で挨拶する岸田文雄・首相/時事通信フォト)

次の負担増の“ターゲット”は…(「こども未来戦略会議」で挨拶する岸田文雄・首相/時事通信フォト)

 4月7日に「こども未来戦略会議」の初会合が開かれた。岸田文雄・首相が掲げる「異次元の少子化対策」の実現に向けた議論の具体化が進められていくことになる。ただ、年数兆円程度にものぼるとされる財源をどう確保するかの議論はこれからだ。会議の議長を務める岸田首相は「世代や立場を超えた国民一人ひとりの理解と協力を欠くことはできない」と述べ、幅広い世代が負担をしていくことを念頭に置いていることが透けて見えた。

 増税や国債発行といった財源確保の方法もあり得るが、現状において〈政府内では、年金や医療、介護、雇用の各種社会保険料の国民1人当たりの月額保険料を引き上げ、上乗せ分を財源とする案が有力視〉(4月8日付、読売新聞オンライン)されているという。

 会社員の場合は社会保険料は毎月の給与から天引きされているため、消費増税などと比べて負担感が少ないことや、「少子化が進めば年金保険料や医療保険料を納める人が減ってしまい、給付が抑制されたり保険料負担が増えてしまう。制度の維持のために少子化対策が必要だ、という理屈が立てやすい」(厚生労働省関係者)といったことから、社会保険料を財源とする案が有力視されているとみられている。

 ただ、各種の社会保険料のさらなる負担増を強いる理屈付けは、決して簡単ではない側面もある。たとえば、会社員の給与から天引きされる厚生年金保険料の料率は現在、18.3%(労使合計)となっている。これは2004年の小泉政権下で年金制度が大きく枠組みを変えられ、年金保険料が際限なく上がってしまうことを避けるために、13年連続で年金保険料を引き上げることと引き換えに、料率の上限を18.3%とする「保険料水準固定方式」が導入されたという経緯がある。

「いってみれば年金保険料はこれ以上引き上げないという“約束”を国民としている状況にあり、これを再度引き上げるとなれば反発は必至で、政治的なハレーションが大きすぎる」(自民党関係者)とみられているのだ。年金保険料に関しては加入年齢が国民年金は60歳まで、厚生年金は70歳まで、と設定されているため、「全世代が負担を分け合う」という岸田政権が設定するコンセプトからも外れてくる。40歳以上しか負担しない介護保険についても同様の指摘がなされている。

 そういったなかでは、保険料を引き上げる“ターゲット”になりそうなのが、医療保険(健康保険)だ。すでに少子化対策の財源として〈有力視されているのが医療保険だ。医療保険料は働き手から75歳以上の後期高齢者まで幅広い年代の人が納めているためだ〉(4月7日付、朝日新聞デジタル)などと報じられている。

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