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少子化対策の財源として有力視される「社会保険料」、会社員の負担率は導入当初から約3倍に膨らんでいる

「異次元の少子化対策」を政策の柱に据えている岸田文雄・首相(時事通信フォト)

「異次元の少子化対策」を政策の柱に据えている岸田文雄・首相(時事通信フォト)

 岸田政権が3月31日に発表した「異次元の少子化対策」のたたき台が注目を集めている。具体的な内容には、多子世帯への児童手当増額、返済不要の給付型奨学金の対象拡大などが挙げられる。子育て世帯への支援が盛り込まれているが、その財源のひとつとして有力視されているのが「社会保険料」だ。

 そもそも現段階で、少子高齢化が進み、国民一人ひとりの社会保険料の負担が増え続けている。協会けんぽの調査では、健康保険組合の約70%が赤字計上していることから、健康保険料を中心に社会保険料の負担が大きくなることも予想されている。

 会社員が負担している社会保険料には、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険の5つがある。このなかの健康保険と厚生年金、介護保険で負担している保険料は、いずれも以下のように導入当初から約3倍まで上昇している。

健康保険:3.6%(1947年)→10%
厚生年金:6.4%(1942年)→18.3%
介護保険:0.6%(2000年)→1.82%

 こうした状況に加えて、異次元の少子化対策の財源として社会保険料が充てられるのであれば、さらなる負担増は必至だろう。

「年間13万円以上」の負担増に

 社会保険料の負担が増えることは、自由に使える「可処分所得」が減少することを意味する。社会保険料負担が増え続ける現代において、可処分所得を増やすためには、収入が増えることが必要条件だ。しかし、国税庁の調査によれば、2008年から2021年の平均給与は3万円しか増加していない。収入が増えない状態で、社会保険料や税金が上がり続けると、世帯の負担が増える一方だ。

 健康保険と厚生年金、介護保険の保険料率は、2008年から2023年の15年間で5.44ポイント上昇(24.68%から30.12%)している。そのうちの半分が会社負担となるため、実際の負担は2.72ポイントの増加となる(ちなみに、会社負担分も同等に増加しており、本来、給与に反映されるべき業績の伸びが抑えられることで、実質的に個人の負担増につながっていることは付記しておきたい)。

 この2.72ポイントを年収500万円の会社員に当てはめると「500万円×2.72%=13万6000円」となり、この15年間の間に、1か月あたりの負担が約1万1333円も増加した計算となる。なお、社会保険料は賞与や手当の有無によって計算が異なるため、本計算はあくまでも概算金額である。

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