投資

「個社要因」「需給」「地合い」 株価を動かす3つの要因を理解すれば投資のポイントが見えてくる

 2022年6月、商品の在庫がないにもかかわらず、あるように見せかけた「おとり広告」が問題となった回転寿司チェーンのスシロー。ネットでおとり広告の噂が広まり、消費者庁による景品表示法違反の措置命令にまで発展し、スシローを運営するF&LCの株価は2か月で37%以上下落しました。

F&LCの日足チャート(『株式投資2年生の教科書』より)

F&LCの日足チャート(『株式投資2年生の教科書』より)

 ただし注意しないといけないのは、おとり広告の不祥事だけが株価下落原因ではないこと。そもそも円安や材料調達難などにより、以前から業績が低下傾向だったのです。実際、F&LCの株価は前年の2021年9月に天井を付けてから、継続的に下落しており、苦境が続いていたことがわかります。

 将来を期待させる材料で急騰したのが、Shinwa Wise Holdings。美術品公開オークションの企画・運営で業界首位に位置する会社です。メタバースやNFT関連の注目企業でもあり、NFTアートオークションを開催し成功を収めています。

 そんな同社が進める新事業「Edoverse Foundation(江戸バース)」が2022年6月20日に発表されました。仮想空間に江戸の町を開発するもので、これが好材料視される形で投資資金が入り急騰したのです。発表からわずか10日で、株価は2倍以上に急騰。

Shinwa Wise Holdings の日足チャート1(『株式投資2年生の教科書』より)

Shinwa Wise Holdings の日足チャート1(『株式投資2年生の教科書』より)

 これもまさに個社要因が株価を押し上げた例といってよいでしょう。

【主な要因2】需給要因

 需給とは、株式や債券の買い(需要)と売り(供給)の動向のことをいいます。買いと売りが片方に偏っておらず、一方向へ突き進まない状態を「需給のバランスがよい」、逆に買いと売りのどちらかが優勢で、一方向へトレンドが出るような相場を「需給のバランスが悪い」といいます。

 株価は、買いと売りによって成り立ちますので、最終的に株価を決めるのは、この需給です。その銘柄の業績など全く関係なく需給だけで、株価が動くケースも意外にあります。例えば、前述したShinwa Wise Holdings。「Edoverse Foundation(江戸バース)」という個社要因もありましたが、需給面でも動いています。将来の業績成長期待から、下図のチャートの下にある「出来高」が急速に増えているのがわかると思います(該当箇所は太線で囲まれた部分)。それ以前に比べて、売りを大きく凌ぐ買い注文が入ったのです。

Shinwa Wise Holdings の日足チャート2(『株式投資2年生の教科書』より)

Shinwa Wise Holdings の日足チャート2(『株式投資2年生の教科書』より)

 出来高とは、ある一定期間内に売買が成立した株数のことです。出来高が増えるということは、それだけその銘柄を売買する参加者数が多くなり、株価が大きく動きやすくなります。

 上場廃止となってしまいましたが、テラも印象的です。医療機関向けに、樹状細胞ワクチンの研究開発などを大学病院と手掛けていました。しかし、研究開発費などが嵩んで赤字が続いたほか、事業の継続性自体を懸念されることが多くなってしまいます。株価も数十円台と、非常に安い値しかつかない「低位株」に位置づけられていたような状態です。新型コロナウイルスの重症患者の治療についてメキシコでの取り組みが話題となり、2020年6月には株価が2000円を超え、急騰しました。しかし、資金調達に苦しみ、4か月後の同年10月には第三者割当増資(特定の第三者に株式を有償で引き受けてもらって、資金を調達する方法)を発表。だが、払込期日に遅れが出るなどで信用が失墜し、株価は暴落しました。

テラの週足チャート(『株式投資2年生の教科書』より)

テラの週足チャート(『株式投資2年生の教科書』より)

 このように、需給要因は個社要因とセットになって発生するケースが多いです。

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