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「年収1000万円を切るなんて…」 子ども2人を難関私立中高に通わせる専業主婦家庭、夫の年収激減でも“奨学金適用外”の苦しみ

年収が半分以下になっても「救済制度」の対象にはならない

 私が、「お子さんの通う中高一貫校では在学生向けの奨学金制度があるのでは。家計が急変して経済的に苦しくなると授業料免除になるはずです」と訊くと、こう返ってきた。

「うちだと年収が高すぎて無理なんですよ」

 A子さんの子どもが通う学校ではないが、浅野の「浅野中学奨学金制度(給付)」は、授業料の半額を給付するが、条件は保護者の年収が400万円未満だ。A子さんの子どもが通う学校もそれと同じような条件だろうと推測する。つまり、年収1400万円がその半分になっても、対象にならないのだ。

 以前、他の件で取材した中に、大手外資系銀行でリストラにあって、転職活動がうまくいかず、結局、趣味特技を活かし、ダンスの講師として、スポーツクラブやカルチャーセンターでバイトをはじめた人もいた。年収は額面240万円ほどだという。アプローチしてくる女性の層が大きく変化したと笑っていた。

 彼は独身で実家に帰ったので生活に困らなかったようだが、専業主婦や子どもを抱えていた場合、生活は困窮し、子どもを私立中学に通わせるのは苦しくなるだろう。そういう例が実際にあるから、御三家のような名門校が在学生向けの奨学金制度を設けているのであろう。

「お金がかかるのに専業主婦家庭が有利」という構造

 夫の収入は半減、学校の奨学金制度では救済されない。マンションは売りたくない。そのため、A子さんがパートに出ることになった。中央区なので近隣にオフィスが多く、仕事があるのは幸いだった。

 事務の補助をする仕事を見つけ、扶養内で働き、それで学費を払い続けることになった。ただ、煩雑で覚えることが多い仕事なのに、時給はいいわけではない。

「働きに出ていると、家事の質は下がりますよね。子どもが2人もいるから家はすぐに散らかってしまいます。それが夫には耐えられないみたいでイライラしはじめて。夫の収入が減ったから私が働きに出ているのに」とため息をつく。

 A子さんの家庭の場合、「収入減」への対策がされてなかったのが問題だっただろう。「夫の収入に依存しているとリスクが大きい」ことをみな知っているから、現在、中学受験をさせる保護者の大半は共働き家庭になってきている。しかし、中学受験はプレイヤーが幼いので、親がいかに寄り添うかで差が出る。そのため、御三家などの難関校に子どもを入れるためには、専業主婦家庭が有利になる構造がある。

「お金がかかるのに専業主婦家庭が有利になる」というのが御三家などの難関校合格の実態であり、そうなれば、高収入男性と専業主婦家庭が多くなる。しかし、現在の高収入男性たちは外資系企業などに勤務し、収入は高くても安定感はないから、入学後、経済的に破綻する家庭も出てくる。そうしたこともあって、難関校では在学生向けに奨学金を設けている。しかし、そうそう簡単には救済はされないわけだ。

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