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“21世紀のベンジャミン・フランクリン”オープンAIのサム・アルトマンCEOの投資力

日本人とはレベルが違う

 AIには戦争や選挙、生物兵器に悪用される懸念もある。

 すでにAIは世界の情報・防衛機関などに使用され、ウクライナ軍の対ロシア戦でも威力を発揮しているという。それがアルカイダやIS(イスラム国)などの国際テロ組織に悪用されたら、世界は大混乱しかねない。

 また、2016年アメリカ大統領選挙のドナルド・トランプ前大統領陣営に加担したケンブリッジ・アナリティカのように、AIを使って対抗馬の虚偽の誹謗中傷をバラ撒くことで選挙活動が有利になったら、民主主義は崩壊してしまう。

 さらに、AIを使えば新型コロナウイルスのように感染力が強い生物兵器が簡単に開発される恐れがある。

 そういう中で、もしオープンAIがうまくいかなくなったら、アルトマンは生成AIにさっさと見切りをつけ、将来有望な新領域に投資を振り向けるだろう。

 これまでなかった画期的な事業を次々に起こす発明家のマスクが21世紀のトーマス・エジソンだとすれば、人の知恵と可能性を見抜く投資家のアルトマンは21世紀のベンジャミン・フランクリンだと思う。

 このような天賦の才は、今の日本からはなかなか出てこない。たとえば、日本を代表するスタートアップ投資家であるソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、アルトマンと長年の友人で毎週のように電話しているそうだが、地球規模のイノベーションの最前線に立っているアルトマンと孫さんとでは、見えている世界が大きく異なる。

 他の日本の投資家や経営者、起業家を見ても、アルトマンやマスクに比べると、残念ながらレベルが全く違う。世界を目指す日本の若者たちの奮起を促したい。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『世界の潮流2023~24』(プレジデント社刊)など著書多数。

※週刊ポスト2023年9月1日号

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