大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

移民問題で周回遅れとなっている日本、目指すべきは「ドイツ型改革」か 大前研一氏が分析

 日本は世界から完全に周回遅れになっているわけだが、これから不足し続けることが確実な労働力を補充して国力を維持するためには、政府が20~30年後を見据えて年間100万人くらいの移民・難民を受け入れていかねばならない。

 その場合、日本にとっては、やはりドイツのやり方が最も参考になると思う。かつてドイツも少子化で人口が増えず、製造業も低迷していたが、シュレーダー改革【*】によって人材を再教育するとともに、「インダストリー4.0(第4次産業革命)」というスローガンを掲げ、国を挙げてデジタル化を推進した。その一方で移民・難民を積極的に受け入れ、約2年の時間とお金をかけて国民化教育を実施している。

【*注/2003年以降、当時のゲアハルト・シュレーダー首相が断行した労働市場・社会保障改革「アジェンダ2010」。解雇規制の緩和や労働者の再教育などにより労働市場の柔軟化、企業競争力の強化を目指した】

 日本語という大きな壁があり、生活習慣なども諸外国とはかなり異なる日本は、ドイツ以上に真剣にこの対策に取り組む必要がある。しかし、少子化対策もマイナンバーカードなどのデジタル化も移民問題も、すべて思いつきの政策しか出せない今の岸田文雄政権には望むべくもない。ドイツの背中はあまりにも遠すぎる。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『世界の潮流2023~24』(プレジデント社刊)など著書多数。

※週刊ポスト2023年9月8日号

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