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キャリア

AI時代に求められる“右脳”構想力を身につける教育 大切なのは子供の「質問する力」を伸ばすこと

AIには真似できない構想力をどう身に付けさせるか(イラスト/井川泰年)

AIには真似できない構想力をどう身に付けさせるか(イラスト/井川泰年)

「答えがある」領域の学習方法は、「ChatGPT」など生成AIの登場で劇的に変わりつつある。経営コンサルタントの大前研一氏は、これからは右脳部分を中心とした教育が求められると提言する。子供の右脳を鍛えるために親は何ができるだろうか? 大前氏が解説する。

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 前号(『週刊ポスト』2023年11月10日号)では、「大学入学共通テスト」で問題文が長くなったりページが増えたりしている「入試改革」に疑問を投げかけた【*】。その上で、21世紀は「答えがない時代」なので、「答えを覚える」教育から「答えを考え出していく」教育に転換しなければならないが、いまだに文部科学省は知識の詰め込みや暗記がメインの学習指導要領を金科玉条のごとく墨守した時代遅れの教育を続けている、と指摘した。

【*マネーポストWEB記事〈【AI時代に求められる教育改革】大前研一氏が提言「文科省を“AI教育省”につくり変えるべき」〉参照】

 人間の左脳は言語・計算力・分析力・記憶などの論理的思考を司り、右脳は創造性・ひらめき・芸術性・イメージなどの直観的思考を司るが、知識を蓄積するだけの左脳部分の教育はもはやトライのような会社に任せ、AIを使って効率良く勉強していくべきである。そして残りの右脳部分を中心とした教育は、完全に個人別のテーラーメイドで、スポーツや音楽のようにインストラクターを付けてスキルを磨くという学習体系に転換しなければならない。

いま親として何ができるか

 では、右脳部分の教育はどうすればよいか?

 私が最も重要だと思うのは、英語で言うところの「ホリスティック・コンセプト」(holistic concept/全体概念)、すなわち全体的な構想を考え抜いて実行していく力を身につけるための教育だ。これはデータに基づいて答えを出すAIには真似できない極めてアナログ的な領域であり、たとえば私の友人で建築家の安藤忠雄氏、テスラやスペースXなどのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)、「チャットGPT」を手がけるオープンAIのサム・アルトマンCEOらが持っている力である。

 私自身は、この“ゼロから未来を構想する力”をマッキンゼーの経営コンサルタント時代に懸命に磨いた。マッキンゼーでは企業が直面している問題に対し、経営者の前で瞬時に本質的な解決策となりそうな「答え」を描き出さなければならなかったからである。

 一方、構想力がないダメコン(ダメなコンサルタント)は、企業に入り込んでいろいろと調査・分析した揚げ句、見えている問題の「逆さまをやりなさい」という愚かな答えを出してくる。従業員がたくさん辞めてしまうことが問題とされれば、「従業員が辞めないようにする方法を考えましょう」という解決策である。

 だが、見えている問題は現象であって本質的な問題ではないから、その逆さまが解決策であるわけがない。従業員が辞めるのは別に原因があるからで、根本的な解決策を探るべきなのだ。

 私は、こういった構想力を日本の経営人材や地方自治体のリーダーなどに育むため、昨年から今年にかけて1年間、一度きりの「構想力講座」を開設したが、同講座では私が言葉で教えるだけでなく、参考例となる国内や海外の地域を訪れて現地の有識者ともディスカッションを行ない、それを通じて受講生に私自身の構想力を伝授した。なぜなら構想力というのは、その場に行って実際に見たり聞いたりしなければ理解できないものだからである。右脳部分を鍛える教育は、そのようにやるべきだと思う。

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