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遺言書が逆効果になる場合も 相続を争族にしないために司法書士が「家族信託」を勧める深い理由

 いま、親の認知症対策として、この家族信託契約を検討する人が増えているのだそう。ただ、家族信託は、きょうだいが何人いても、受任者となるのは1人。他のきょうだいの同意はいらないため、進め方を間違えるとむしろ、もめるきっかけになってしまう。

「だからこそ、先ほどいった“家族の棚卸し”をするのに、絶好のタイミングになるわけです。私は、家族信託のご相談をいただくと、『親御さんとごきょうだいも全員を集めてください』とお願いをします。そして、その場で、『お父さんに何かあったとき、◯◯さんが支えていくと言っています。そのうえで、これからの役割分担をしていきませんか?』と話し合いを促すようにしています。介護が必要になったときは、どういう体制で頑張るのか。亡くなった後の相続はどうするのか。将来をみんなで見通していくのです」

家族信託の契約は認知症対策だけではない

 家族信託契約は亡くなったあと、財産を誰に渡すかを決めることもできる。たとえば、父親が亡くなり、その財産の多くは母親が相続をするが、母親は認知症という場合。事前に父親と家族信託契約を結んでいれば、受託者の子どもが、続けて母親を支えていくことができる。財産管理も含め、切れ間なく親をサポートすることができるのだ。

「家族信託契約は確かに認知症対策ではありますが、いちばんは、お父さんとお母さんを中心としたこのファミリーが、今後、どうしていくのかをみんなで決めていく、そのきっかけになることです。それがいちばんのメリットだと私は考えています」

 話し合った結果、「家族信託はしないけれど、きょうだいで親を見守っていく」という決断をすることもあるそう。

「でも、それはそれでいいんです。家族でちゃんと合意形成ができていることが重要なのですから」

 相続を“争続”にさせないためには、とにもかくにも、コミュニケーション。まもなく、新型コロナウイルスが5類に移行してはじめての年末年始。帰省をして、ゆっくり親と話をする機会を設けてみてはいかがだろうか?

【プロフィール】
上木拓郎(うえき・たくろう)/相続デザイナー、司法書士。アンド・ワン司法書士行政書士法人代表。1980年、栃木県生まれ。一橋大学社会学部卒業。2009年に司法書士試験に合格し、翌年独立。父方の祖父の相続でもめて、親族が仲違いしたことをきっかけに相続相談に注力。これまで、年間300名以上、延べ3000名以上の相続相談に対応。セミナーや講演会等のほか、YouTubeでも積極的に情報を発信。著書に『生前から始める「えんまん相続」のすすめ』(ビーパブリッシング)。

取材・文/鈴木靖子

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