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【日本EVの逆襲はあるか】ようやく始まった反転攻勢 トヨタは電池生産への投資加速、ホンダはソニーと“車のスマホ化”へ

 ただ、技術面において日本企業には課題が多い。先進的なEVの技術的構造はスマホやパソコンに近づきつつある。従来、自動車にはエンジン制御、ブレーキ制御といった具合に機能ごとに「ECU」と呼ばれるマイコン(制御部品)が搭載され、高級車になると80個ほど搭載される。ところがテスラ車にはECUが数個しかないとされる。それは、高性能コンピューターが車載OS(基本ソフト)により中央から各機能を制御するからだ。

 こうした構造になると、OSをアップデートするだけで新しい機能が使える。加えて電池の消費量を少なくするために車体の軽量化が求められるが、ここでもテスラやBYDが一歩先を行く。

 2022年のEV販売状況を見ると、中国では約20%がEVだった。同様にEV比率が高まっているドイツは約18%、米国は約6%。これに対し、日本のEV比率はわずか1.4%に留まる。まずは充電設備など国内の環境整備が急務となる。

 しかし、こうした現状でもトヨタやホンダは2024年3月期に過去最高益を更新する見通しだ。その要因は、皮肉なことにEVに過剰投資しなかったことと円安にある。

 先行する欧米も順風満帆というわけではない。英国は2030年までにガソリン・ディーゼル車の「新車販売禁止」を打ち出したが、2035年まで延期すると発表。米国でも各社が生産目標を取り下げるなどしている。

 EVシフトでリードしていた欧米勢の停滞、それを好機とみて攻勢をかける中国勢──日本企業は残された時間のなかで、欧・米・中に追いつけるか。2024年は浮沈が懸かる勝負所となる。

(了。前編から読む

【プロフィール】
井上久男(いのうえ・ひさお)/1964年生まれ。大手電機メーカー勤務を経て、朝日新聞社に入社。経済部記者として自動車や電機産業を担当。2004年に独立、フリージャーナリストに。主な著書に『日産VS.ゴーン 支配と暗闘の20年』などがある

※週刊ポスト2024年1月1・5日号

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