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「痴漢を蹴って撃退したら、逆に傷害罪で訴えられた…」正当防衛と過剰防衛の境界線はどこにあるのか? 弁護士が解説

「いつ、何のために足蹴りをしたか」が争点に(イラスト/大野文彰)

「いつ、何のために足蹴りをしたか」が争点に(イラスト/大野文彰)

 自分が痴漢被害に遭った時、犯人を撃退するためにぶったり蹴ったりした場合、正当防衛になるのだろうか? また、もしも痴漢のほうから傷害罪で告訴されたら、どうすればいいのだろうか──。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 20代の姪が通勤電車の中で痴漢被害に遭いました。頭にきた姪は、その場で犯人の男を蹴ったそうです。すると逆に、その男から傷害罪で告訴されました。しかし、どう考えても姪の行為は正当防衛で、悪いことはしていません。何か解決策はありますか。また、電車で痴漢被害に遭った場合の対処法を教えてください。(神奈川県・58才・主婦)

【回答】
 姪御さんは頭にきて足蹴りをしたので「故意の暴行」になり、けがをさせると傷害罪に問われる可能性があります。

 しかし、いつ何のために足蹴りをしたかが問題です。というのは、急迫で違法な侵害をする者に対し、自己または他人の権利を防衛する意思でやむを得ずにした行為は正当防衛として処罰されないからです。

 通常、電車内での痴漢は暴行・脅迫を伴いませんが、迷惑防止条例違反で処罰される違法な行為です。そこで、現に行われている痴漢行為、すなわち急迫不正の侵害を止めさせ、自分の身を守るために足蹴りが必要な場合であれば、正当防衛となって許されます。

 正当防衛には防衛の意思が必要ですが、「頭にきた」としても防衛の意思はあったはずですから、正当防衛は否定されません。

 ただし、けがを負わせると、その程度によっては必要な範囲を超えた過剰防衛として罪の程度が軽減されるにとどまります。逆に、痴漢行為で捕まった後に足蹴りにしたとすれば、もはや急迫不正の侵害がないので正当防衛になりません。

 男の告訴の狙いは、姪御さんから痴漢行為の処罰を求めない譲歩を期待した取引の可能性もありますが、正当防衛を証明できれば心配はあまりありません。

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