投資

【個人投資家が知っておくべき「金融商品の手数料」の正体】「仕組債」と「ラップ口座」の不透明さ、二重取り・三重取りされていないか要注意

ファンドラップの資料を読んでみると…

 ラップ口座(ファンドラップ)も全体の手数料がわからないか、少なくともとてもわかりにくい説明になっています。私もいろいろ資料を読んでみましたがよくわかりませんでした。ファンドラップというのは、まずラップ口座があってそこに個人はお金を入れます。その後このファンドラップがいろいろな投資信託を買って分散投資をするのです。その投資信託でも手数料が発生するわけですが、ファンドラップでまず手数料を取って、個々の投資信託でもまた手数料を取ります。手数料の二重取りですね。

 私があるファンドラップの資料を読んでいたらこういうのもありましたよ。わざとわかりにくく書いてあるので完全には理解できませんでしたけど。まずファンドラップがあって、その下にアセットクラスごとの「Fund of funds」がぶら下がっていてその「Fund of funds」がさらにいくつかの投資信託を買う。どのレベルでどのぐらいの手数料を取っているのかの開示が見つからないのでわからないのですが、なんとなく手数料の三重取りっぽいのです。ちゃんと開示がわかりやすくしてあるのは1層目のファンドラップの手数料だけです。その下にぶら下がっているファンドでどれだけ手数料が抜かれているかわかりません。

 ファンドラップというのは証券会社にとっては手数料の一部だけを開示することで後の手数料は取り放題というとっても都合のいい商品なのかもしれません(実際にどれだけ取っているのかはわかりませんが開示がわかりにくい以上疑われても仕方がないですよ)。それにパンフレットを読んでも一体だれが運用しているのか、インベストメントコミティーのメンバーが誰なのか、彼らがどういう運用哲学を持っているのかまったく不明です。責任者は前面に出て、もっと情報発信すべきです。

 証券会社はこれだけ手数料を取れば、パフォーマンスが悪くなるのは当たり前だとわかっているはずです。だから責任者の名前とか出したくないのでしょうか?

 ラップ口座の中にはパンフレットに「細かな手数料に関しては目論見書に記載されています」という一文が書かれているのがありますが、目論見書なんて誰も見ないですよ。笑っちゃいますよ。私のようなプロでも公募増資の際の目論見書なんて読んだことありません。目論見書を読んで「手数料を発見する」ような人はそもそもラップ口座なんかには投資しないでしょう。目論見書を読むよりネット証券に口座開くほうが楽ですから。

 証券会社はわかっていてそういうことをやっているのでは。この重層的な手数料は全部パンフレットの1枚目にまとめて大きく開示すべきです。

 これまでのファンドラップの話は全部「対面証券会社」のファンドラップの話です。最近ではネット証券もファンドラップを始めていて手数料はかなり安くなっています。大変好ましい展開だと思います。ネット証券の参入によって競争が激しくなり手数料が下がっていけば長期投資に向いた商品になってくるかもしれません。

※清原達郎・著『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)より、一部抜粋して再構成

【プロフィール】
清原達郎(きよはら・たつろう)/1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社、海外投資顧問室に配属。スタンフォード大学で経営学修士号(MBA)取得後、1986年に野村證券NY支店に配属。1991年、ゴールドマン・サックス証券東京支店に転職。その後モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問を経て、1998年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年に発表された最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに躍り出る。2023年、「タワーK1ファンド」の運用を終了し、退社。はじめての著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)が話題に。

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。