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【介護崩壊】「訪問介護の基本報酬引き下げ」が事業者の倒産・休廃業の引き金に 「異次元の少子化対策」の財源捻出で狙い撃ち

ホームヘルパーの有効求人倍率は15倍超

 日本の高齢化スピードは速い。すでに80歳以上人口が総人口の1割を占めており、要介護者が増え続けることは避けがたい。2021年時点で1か月あたりの訪問介護の利用者は118万365人だったが、厚労省は2040年には134万590人になると予想している。

 こうした伸びに対応するには2040年までに事業所数を2021年より約5000多い4万649カ所とし、訪問介護員(ホームヘルパー)についても2021年より3万2000人ほど多い28万2914人に増やさなければならないと推計しているが、達成のめどは立っていない。

 ホームヘルパー職のなり手が不足しているためだ。2022年度の有効求人倍率は15.53倍となっており、施設介護職員の3.79倍と比べても極めて高い。仕事のハードさに対して賃金が低く、志望者が少ないのである。

 年配者が多く、大量退職期に入ってきていることもある。基本報酬の引き下げに対して、現場には「誇りを持ってやってきた人ほど自分の仕事を否定されたと感じている」(訪問介護事業者)との指摘もある。報酬改定に不満を持つ人たちが他の仕事に流れていくことを懸念しているのだ。

 最近では「依頼してもホームヘルパーが来ない」というケースが見られるが、報酬改定を機に不足に拍車がかかることになれば「ホームヘルパー待ち」は常態化しよう。

後編に続く

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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