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【介護崩壊】介護報酬改定で訪問介護の弱体化は必至 仕事と介護を両立させる「ビジネスケアラー」の介護離職で経済損失は9兆円超え

現時点で介護にかかわりがない人も、他人事として見過ごすわけにいかない(写真は要介護認定の結果通知書/イメージ)

現時点で介護にかかわりがない人も、他人事として見過ごすわけにいかない(写真は要介護認定の結果通知書/イメージ)

 2024年度の介護報酬改定が、全国の介護現場に波紋を広げている。訪問介護の基本報酬引き下げによって「自分の仕事を否定された」と感じている事業者も少なくないという。今後さらに人手不足が深刻化し、家族の介護や看護のために仕事を辞めざるを得なくなる「介護離職」や「ビジネスケアラー」が増えていけば、この国の社会・経済はどうなるのか──。人口減少・少子高齢化問題に精通する作家・ジャーナリスト河合雅司氏のレポート。【前後編の後編。前編を読む

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 訪問介護員(ホームヘルパー)の人手不足は、地方の人口流出の加速も呼び起こす。

 広範囲に点在する利用者宅をカバーしなければならない地方の小規模訪問介護事業者には経営体力が弱いところが少なくなく、基本報酬引き下げの影響を受けやすい。こうした事業所が倒産・休廃業に追い込まれれば訪問介護サービスの「空白地帯」が生じる。

「空白地帯」とならなくとも、利用したいタイミングでサービスを受けられない「困難地帯」となれば同じだ。こうした地区の住民は在宅介護の将来展望を描けなくなる。

 一人暮らしの高齢者は増加傾向にあり、頼れる家族や親族がいないという人が増えていく。「空白地帯」や「困難地帯」で訪問介護サービスを不可欠とする人は引っ越しの検討を迫られることになろう。

訪問介護「空白」のしわ寄せは「家族」に向かう

 現時点で要介護状態にない人も、他人ごととして済ませるわけにいかない。すべての人が要介護状態となり得るためだ。「空白地帯」や「困難地帯」では、元気なうちに親族がいる都市部などに移り住む「予防」の動きも大きくなりそうである。

 これからの地方創生にとっては、在宅介護の態勢がどれだけ充実しているかが大きなポイントの1つになるということだ。訪問介護の「空白地帯」や「困難地帯」の広がりは、国土形成まで左右しかねない。

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