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【医師の地域偏在という大問題】大都市に医師が集中、地方都市は人口減少で「患者不足」が加速し医療機関の倒産を招く

65歳以上人口が大幅に減少する県

65歳以上人口が大幅に減少する県

地方の人口減少が進むほど、大都市に医師が集中する

 多くの人は勤務先を選んだり、開業したりする際に、収入面や将来性を考慮するだろう。それと同じで医師が診療所を新規開業するにあたって、患者数が多く見込めるエリアを選ぶのは経営者として極めて合理的な判断だ。それどころか、人口減少による将来的な患者不足に備えて、病院ごと東京に進出する地方の医療法人も出てきている。

 一方、医師も「地域住民」の1人である。家族含めた生活環境を優先するのは当然である。医師不足が起きる地域において不足しているのは医療機関だけではない。小中学校の統廃合や介護サービス、小売り店舗など民間事業者の廃業・撤退も進んでいよう。子供の教育や親の介護など家族の暮らしを考慮し、生活が便利な大都市や県庁所在地などに勤務地を求める医師は少なくない。地方の「患者不足」が進むほど、医師や病院が大都市に集中する流れの加速が予想される。

 こうした現実に対し、政府や自治体は現状を前提として決め手を欠く対策を繰り返している。オンライン診療を普及させたり、ドローンなどを使って薬を運んだりすることでカバーしようという取り組みからしてそうだ。手術などは原則として対面でなければ不可能であり、問題の根本解決には遠い。

 日本の人口減少スピードは速く、地域差は今後拡大していく。医師の地域偏在の主要因が人口減少である以上、かなり大胆な政策を講じなければ医師の偏在は解決しない。強制力がある程度なければ状況は変わらないだろう。

 医療は国民生活の基盤をなし、公共性が強い。現職医師の反発は大きいだろうが、期間を限定してでも警察官や自衛隊員と同じように公務員化することは選択肢に入ってこよう。

 とはいえ、医師を公務員にしても問題がすべて解決するわけではない。

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