森口亮「まるわかり市況分析」

【米国相場に変調か】ダウ平均株価にトレンド転換のサイン 利下げ見通しの変化や地政学的リスクの高まりも懸念材料

一目均衡表では「準備構成」と呼ばれる

 私が愛用している一目均衡表は、日本で生まれたテクニカル分析の一つです。約90年前の1935年に、一目山人(本名・細田悟一)が7年の歳月と多くの手助けを得て完成させたこの分析方法は、今日に至るまで国内外で広く使用されています。

 この一目均衡表には「準備構成」という概念があります。これは、長期の下降トレンドから上昇トレンドへの転換時に現れる底形成のパターンを指すのですが、基本形は「Wボトム」とほぼ同じ考え方とされています。

 買いサインを逆にしたものが売りサインと言われますので、上昇トレンドから下降トレンドへの転換を示す「Wトップ」は、逆転パターンとして捉えることができるのではないでしょうか。

 また、今回の準備構成後に、一目均衡表においての売りサインがすべて出現する「三役逆転」が出た場合は、大きな転換のサインになるとされています。

 文字で読むだけでは理解しにくいかもしれませんが、主要なテクニカル分析を見た場合、短期的には、トレンドが転換している兆しが複数出現している事実を認識しておくことが大切です。

NYダウが崩れた理由とは?

 春先、好調な勢いを見せていたNYダウが、なぜこの2週間で急激に下落してしまったのでしょうか? 経済情勢を踏まえて分析すると、インフレ動向の変化と、新たに浮上してきた地政学リスクが影を落としている可能性があると思います。

 2024年年初から、市場の焦点は「FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ」でした。年内に予想されていた0.75~1%程の利下げは、株価の大きな支えとなっていました。しかし、4月に入って発表されたCPI(消費者物価指数)は、市場予想だけでなく、前月の数値をも上回る結果となり、インフレ率の高止まりが明確になりました。

 FRBの要人からはタカ派の発言が相次ぎ、「年3回の利下げの達成は困難なのでは」との見方も出始めています。極端なシナリオとして、年内の利下げは一度もないという予測も一部では噂されています。

 そうした中で始まったイランのイスラエルへの攻撃開始のニュースによって、世界経済に影響を及ぼす地政学リスクが高まりました。地政学リスクの増加は原油価格を押し上げ、これが更なるインフレ懸念を引き起こすリスクもはらんでいます。

 経済にとっては、高インフレと地政学リスクというダブルパンチに見舞われているのです。

 イランが攻撃をしたとされる4月12日では、金利の低下と株安が同時に発生していました。これは景気後退を懸念した動きです。高インフレと地政学リスクの組み合わせが、景気後退のリスクを強く意識させているのです。かつて期待された「ソフトランディング」が達成できるかどうか、その可能性はますます不透明になっています。

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