トランス脂肪酸が含まれる食品の代表格であるパンでは、製パン市場シェアの9割を占める大手3社(山崎製パン、フジパン、敷島製パン)がホームページ上で各商品のトランス脂肪酸を含めた成分表を公表しているものの、商品のパッケージには記載がなく、店頭で確認することは難しい。
ホームページでの公表についても、表示方法が商品によって「1個当たり」「100グラム当たり」「1本当たり」「1枚当たり」「1包装当たり」とまちまちで、単位が統一されていない。山崎製パンの「ランチパック」のような2個入りの商品も「1個当たり」、「チョコチップスナック7本入」などの複数本が入った商品も「1本当たり」で表示されている。
一方、表示基準のある米国では、FDA(食品医薬品局)が全国的な食品消費量の調査結果に基づき、一度に口にする食品の一般的な基準量を「1人前(Serving size)」として数値化し、パッケージへの表示を義務づけている。ボストン在住の大西睦子医師(内科)が説明する。
「米国の栄養成分表示は、食品ラベルに1Serving size当たりのグラム数で表記するよう定められています。消費者にとって一食のグラム数と成分の摂取量がわかりやすくなっています」
日本でも購入者の視点に立った表示基準を設けるべきではないか。その手がかりとなる指標とすべく、本誌は大手3社のパンについて、トランス脂肪酸の含有量を「1包装当たり」に換算し、16位までの計119商品をランキングにした。複数枚入った食パンを一度にすべて食べる人は少ないだろうが、少なくとも1包装という統一した基準により、含有量は比較しやすくなったはずだ。
含有量は最大1.5グラムから最少で0.2グラムとなった。
(以下、表で「1包装当たりのトランス脂肪酸『含有量ランキング』」を紹介)
WHOは2023年までの全廃を掲げた含有量の目標とは別に、2003年にトランス脂肪酸の「摂取量」の目標を、総エネルギー摂取量の1%未満としている。前出・井上教授が言う。
「日本人の平均的な総エネルギー摂取量で換算すると、『1日当たり約2グラム未満』となる。ただし、これは『2グラム未満であれば食べても問題ない』という意味ではありません。心血管疾患やがん、認知機能の低下などの症状は、その人の生活習慣や持病などにより発症リスクが異なるからです」
だからこそ、どれだけの量を摂取したのか、できるだけ正確に知る必要があるのではないか。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2024年9月13日号