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田代尚機のチャイナ・リサーチ

対中投資制限が強まる中でも中国株に資金流入 欧米機関投資家が考える中国株投資の2つの大きなリスクとは

対中加圧が強まる一方で米国市場に上場する中国企業も

 欧米機関投資家は、中国株を投資対象として選ぶにあたり2つの大きなリスクを考慮する必要がありそうだ。一つは自由な投資が米国政府によって阻害されないかどうか。もう一つは懲罰関税を利用した中国からの輸入制限、エンティティリストを使った輸出制限、投資制限などを通じて行われている米中デカップリング、あるいはデリスキング政策により中国経済の成長が抑制されるリスクだ。

 米国では、中国の台頭、アジアの政治的な安定が不利益につながる勢力が大きな政治力を持つ一方で、自由な貿易、投資、金融取引が利益に繋がる勢力も存在する。後者の中には有力金融機関、機関投資家も含まれるだろうが、そうした勢力はビジネスに影響するような極端な対中加圧の動きについて、抑えようとするだろう。

 米国政府は、2021年に本土タクシーアプリ開発のDiDiを上場廃止に追い込むなど、中国企業による米国市場を通した資金調達にも制限を加えようとしている。しかし、中国の民営大手自動車メーカーグループ・浙江吉利控股集団の傘下企業でEV自動車を製造するZEEKRは2024年5月10日、ニューヨーク証券取引所に上場、4億4100万米ドルの資金調達を行った。直近では10月4日、本土宅配便会社であるBingExがNASDAQに上場、6600万米ドルの資金調達を行っている。欧米系金融機関は中国銘柄を有望な金融商品として扱うことを止めようとはしていない。

 NYダウは10月4日、史上最高値を更新しているのに対して、同日のハンセン指数は足元で急騰したとはいえ、2018年1月29日に記録した最高値の68%の水準だ。同日におけるハンセン指数のPER(株価収益率)は13.25倍と決して割安水準ではなくなってはいるが、それでも過去最高値あたりの17.74倍、この5年間の最高値17.64倍(2021年6月30日)と比べれば3割程度低い水準だ。

 今回の急騰劇は、不動産不況に対する総合的な政策が打ち出されたことで、全体景気がこれから回復に向かうといったシナリオを多くの投資家が信じているからだろう。景気敏感株から電気自動車、AIなどの成長株まで、投資対象は探しやすい。

 8日の香港市場は本土政策情報に翻弄されて大きく売られているが、景気回復に向けた当局の姿勢は変わらないと見ている。米国は中国の成長を止められないと考える投資家がさらに増えれば、中国株市場への資金流入はしばらく続くのではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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