とはいえ、必要がないのに発令し、出社しない労働者を解雇すれば解雇権乱用として、解雇は無効になると思います。もっとも、業務上の必要性は使用者が判断するので、明らかに不当と判断できる場合でない限り、従わないと不利益を受ける恐れがあります。
さて、あなたは介護の必要があります。『育児・介護休業法』では家族を介護する労働者が配置転換で就業場所が変更し、介護が困難になる場合は使用者に介護の状況の把握、労働者の意向の斟酌、代替手段の有無の確認などの配慮を義務付けています。その配慮がない場合、労働者は使用者に苦情を申し出ることができ、さらに労働局長に援助を求め、解決への助言や指導を受けることができます。
あなたへの出社命令は配置転換によるものではないかもしれませんが、就業場所の変更で介護が困難になるのに、会社が配慮をしないのですから、労働基準監督署に相談するとよいでしょう。この相談をしたとしても、会社はあなたに不利益処分を行なえません。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年4月11日号