「日本人は守銭奴」の真意
もう一つの「日本人は守銭奴」というのは興味深いデータがある。藤野さんが教鞭をとっている大学の授業で、学生にアンケートをとったところ8割が「カネ儲け=悪」と思っていたそうだ。
潔癖な人が多い若者だけでない。
中高年になってもおカネ儲け、特に投資に悪いイメージを持っている人は多い。いまから15年ほど前になるけれど、当時の経済産業省の次官が「(デイトレーダーなど一部の株主は)バカで浮気で無責任」と発言して、投資家から批判を浴びた。社会のエリート層で、権力も財産もある人ですら、おカネ儲けは悪いことだという意識は根強い。
でも本音はどうだろう。
イギリスの国際NGO「Charities Aid Foundation」が出している世界寄付ランキングという指標がある。これは、1カ月の間に「困っている見知らぬ人を助けた」「寄付をした」「ボランティアをした」の3項目で各国を評価するというもの。2024年のデータで日本は142カ国中141位ととてつもなく低い。先進国はもとより、アジアやアフリカの貧しい国々にも負けている。
つまり、おカネ儲けが悪だという割には、寄付をしたり困っている人を助けたりという行動を世界的に見ても全然していないのだ。
しかもこうしたニュースがヤフーに掲載されたとき、寄付をしていないことを恥じるどころか、「おカネがないから」などと開き直る意見が多かった。
もし、日本人の多くが「おカネ儲けが悪」というならば、貧しくても清い心を持っていればいいだろう。しかし、現実には他人を助けないどころか、「karoshi(過労死)」が英語になるほど、日本社会では劣悪な環境が当たり前。自分や家族ですら助けず、「おカネが悪い」と内心思いながら、おカネのために働き続ける。
政府は老後資金不足を恐れて「貯蓄から投資」の旗を振り続けてきたが効果は薄い。2024年1月からの新NISAで多少は投資をする人が増えたとはいえ、2200兆円に及ぶ家計の金融資産の過半数は預貯金。タンス預金も数十兆円規模で存在することが、新札発行の一つの理由とされている。