藤野さんの指摘通り、日本人は口ではおカネが汚いと言いながら、その汚いものをしっかりため込んで、寄付も投資もしようとしない守銭奴なわけだ。
同時に一攫千金でお金持ちになれればという気持ちは内心こっそりもっている。
投機的で大儲けも大損の可能性もあるFX(外国為替証拠金取引)やビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)を購入する人の割合は世界的に多いといわれる。パチンコ、競馬、競輪などギャンブルそのものがこれだけ盛んな国も、先進国では異例だろう。
しかも、楽におカネ儲けをしたいから、ちゃんとした知識を得ようという心構えがあまりない。SNSや動画の、どこの誰かもわからない匿名のアカウントの言うことを信じ込んでしまう。
不正確な情報を伝えるメディアにも責任
本来正しい情報を伝えるべきメディアも例外ではない。
経済メディアとして日本で一番信頼されているのは日本経済新聞だが、例えば「日立・三菱重工統合へ」(2011年8月)、「任天堂 スマホに対抗」(2012年6月)などの事実と異なる報道に、個人投資家だけでなくプロの投資家も踊らされた。
経済、投資に関する情報は不確かなものが多すぎる。
本書はどうなのかと突っ込まれそうだが、ぼくは娘のために自分の知識を総動員して書いている。しかし、本書を鵜呑みにせず、あくまで参考文献として読むという心構えでも構わない。
そもそもメディアの記者は投資に関して必ずしも詳しくない。例えば日経新聞の記者は、社員によると、短期の株式投資を厳しく制限されているという。水泳の理論に詳しいけれど泳いだことがない人に、水泳の名コーチが務まるだろうか。
海外も同様だ。著名な投資家で20年間、米CNBCテレビで投資番組のホストをしているジム・クレイマー氏は「ニューヨーク・タイムズ指標」というのを提案する。ニューヨーク・タイムズの1面に「株式は暴落して今後も悲惨な状況になる」と書かれたときは、逆に株式を購入する絶好のチャンスだというわけだ。メディアがいかにあてにならないかがわかるだろう。