橋本英二会長兼CEOが取り組んできた買収計画の行方は(AFP=時事)
日鉄・橋本会長兼CEOは「低炭素の実機化は海外で行う」と発言
低炭素で安定した電源の確保しやすいアメリカで、日鉄は電炉操業の実績を積み上げることになるのか。
そうした見方を裏付けるように、昨年5月、エネルギー基本計画を議論する国の総合資源エネルギー調査会のテーブルで、橋本氏はこう述べていた。
「(低炭素電源を確保する)予見可能性が高まらないといった場合には、低炭素の実機化は海外で行って、地球規模での脱炭素に貢献し、国内では生産を縮小することでCO2の発生を削減する――こういった選択にならざるを得ない」
図らずも、そうした選択に近づくような環境のピースが埋まったようにも見える。
トランプ流のディールに背中を押されるかたちで米国に踏み込んだ日鉄が、その恩恵をいかに日本の国益につなげることができるのか。
脱炭素の規範と、アメリカファーストの潮流を睨みながら、日本人経営者が打つ次の一手は、日本経済の今後を占う上でも目が離せない。
取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)
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「マネーポストWEB」掲載のシリーズ「日本製鉄のUSスチール買収問題」では、バイデン政権から買収中止命令が出る直前のタイミングでの「日本製鉄・橋本英二会長の独占インタビュー」や日鉄OBの証言、日米鉄鋼摩擦の交渉にあたった元経産官僚の最新現状分析などを掲載している。
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